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【言いたいことが言えない】自己主張が苦手なあなたが学ぶべき“アサーション”がもたらす効果

近年、ビジネスの現場で“アサーション”という考え方が注目されています。アサーションとは「自分も相手も大事にして、主張はしっかり行うものの、相手は傷つけない表現方法」です。

職場でのコミュニケーションは業務においても重要です。ですが、やり取りの中で自己主張が強いと、相手から『傲慢』『自分勝手』という印象を持たれてしまいます。かといって、自己主張が弱すぎることも問題です。意見を言わないことでその場はやり過ごせますが、建設的な人間関係を構築することができないからです。

会社以外の顧客や、プライベートでの付き合いも円滑におこなえる効果が期待できるアサーション。実際の手順やメリットはどういうものになるのでしょうか。今回はアサーションの意味やトレーニングのメリット、効果的なトレーニング方法等を紹介します。

 

[目次]

■アサーションとは? 自己主張の3つのタイプ

■アサーショントレーニングのポイント

■アサーショントレーニングを企業に取り入れる5つのメリット

■アサーションとは?

アサーション(assertion)とは対人コミュニケーションスキルの一つです。Assertionは英語で「主張」や「断言」という意味ですが、コミュニケーションの分野では「自己の主張を的確に言葉にすること」を意味します。

 

主張というと、特に日本では自分本位さと混同されがちです。しかし、アサーションは相手の主張を否定してまで自己主張したり、強い言葉や口調で相手に主張を通したりすることではありません。「話す側と聞く側が互いを尊重し、対等な関係を築きながら、率直に自己主張をおこなう」ことが基本的なアサーションの概念です。これを身に着けると、価値観や立場の異なるさまざまな相手と、対等かつ円滑な意見交換ができるようになります。

 

・ あなたはどれ?「自己主張」の3タイプ…ジャイアン、のび太、しずかちゃん

次のような場面をイメージしてみてください。日常的なあなたの返答は、次の3つのどれに近いでしょうか?

 

事例:終業間近のことです。突然あなたは上司から「今からしてほしい仕事がある」と言われました。

あなたの本心:このあと予定があるのになあ…。今日は早く退勤できると思っていたのに。

 

あなたは上司になんと返答しますか?

 

①「今日は予定があるので無理です!」とズバリ答える人…攻撃的(アグレッシブ)タイプ。

 

〈アグレッシブタイプ(攻撃タイプ)の特徴〉

・自己主張が強く、自分を曲げないタイプ。

・自分の意思を全うするのが最重要事項のため、相手やチームメンバーの気持ちを考えられなくなる時も。

・分かりやすく高圧的な人もいるが、一見穏やかに見えて実は頑固、という人もいる。

・ドラえもんでいえばジャイアンタイプです。リーダーシップがある反面、他人の目にはわがまま・傲慢(ごうまん)と映ることもあります。

 

 

②「…はい、わかりました。」空気をよんで自分の意見を言わない人…ノン・アサーティブ(非・自己主張)タイプ。

 

〈ノン・アサーティブ(非主張タイプ)の特徴〉

・自己主張、自分の意見を言うのが苦手。

・曖昧な言い方で、結論を言わず遠回しな表現で相手に察してもらおうとする。

・周りに愚痴をこぼしてしまう。

・ドラえもんでいえばのび太タイプです。非がある相手にも反論できないと、ただ受け入れるしかありません。アグレッシブと真逆の位置付けとも言えます。アグレッシブのような面倒くささはないものの、「察して」欲しがるタイプなため、やや扱いづらい印象を与えます。

 

 

③「じつは、今日は予定があるんです。お急ぎのところ申し訳ないですが、可能ならば明日の対応でお願いすることはできませんか?」①と②の中間の人…アサーティブ(理想的)タイプ

 

〈アサーティブ(攻撃・非主張のバランスが取れた理想タイプ)の特徴〉

・自分自身の意見を表現しつつも、相手の表現も尊重できる。

・その場の空気を大切にする。

・自分の意見を押し通さず、かといって、相手に合わせすぎない。意見が違っても対話を重ね、互いが納得できる結論に導く理想的なコミュニケーション。

・ドラえもんでいえばしずかちゃんタイプです。相手に良い心象を与えつつ、自分の意向を実現できる理想的なスタイルとされています。

■アサーショントレーニングのポイント

ここでは実際にアサーショントレーニングをする上でのポイントを解説します。

 

ポイント① 相手との対等な目線をイメージする

多様化している現代社会で、他者と衝突せず良好な関係を築くためには「相手の思考を想像する」ことが重要です。しかし、例えば部下なら上司や先輩のいうことを優先しないといけない、という考え方はアサーティブではありません。自分と相手の双方を対等に考える目線をイメージしてみましょう。

 

 

ポイント② 相手が傷つくかもしれない言い方を想像してみる

一般的に「自分が言われたら嫌なことは人に言わない」というものの、自分にとっては平気だけど相手にしてみれば傷つく、ということはよくあるので厄介です。

相手の思考だったら嫌だろう、傷つくかもしれない、という表現を見つけて取り除いていきます。

 

ポイント③ 自分の気持ちをどう表現するか考えてみる

次に大切なのは、「相手を傷つけることなく、自分の意思を伝えられるような言葉を選ぶ」という作業です。

 

アサーションで推奨されるのが、「I(アイ)メッセージ」というもの。

「I(アイ)メッセージ」とは、自分自身を主語とした表現方法です。

相手の意見は間違っていると感じた場合に、相手に対して「(あなたの考えは)間違っています」と伝えることは、主語を「あなた(You)」とする「You(ユー)メッセージ」です。

 

一方、「私は○○だと思います」と伝えるのが「I(アイ)メッセージ」です。「あなたは間違っている」という表現で相手を否定するのではなく、「自分はこう思う」と伝えることで、お互いに意見は違っていても同じ立場として、建設的な会話をすることにつながります。

 

 

ポイント④ 今この場にふさわしい言い方かどうかを確認してみる

最後に、「その表現が、今この場にふさわしい言い方かどうか」を考えてみましょう。簡単にいえば、「シチュエーション」です。例え相手のやり方が間違っていて、善意から助言をしようとしても、他の同僚や後輩の面前で指摘することは相手にとって屈辱的で、恥をかかされたように感じるかもしれません。このように「ふさわしい場か否か」を最後に考えていきましょう。

■アサーショントレーニングを企業に取り入れる5つのメリット

社員がアサーションスキルを身につけることによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは5つのメリットを紹介します。

 

①社内コミュニケーションが活性化する

あなたは、自分のちょっとした発言が誤解を招き同僚に話しかけるのをためらったり、上司や同僚に対して助けを求められず一人で仕事を抱え込んだりすることはありませんか?実は、この様な連携の小さな遅れが積もることで職場の生産性は低下します。

アサーショントレーニングで適切な自己表現ができるようになれば、役職や価値観が異なる人とでも、互いに納得のいくまで対話をすることができるようになります。必要な時は周囲に助けを求めることや、謝るべき場面では速やかに謝ることができるなど、スムーズな会話が増えれば業務効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。

 

 

②社内のハラスメント防止に役立つ

上司が部下に業務上の指導を行う場合、伝え方を誤るとパワハラと捉えられることもあります。指導を行う立場である上司・先輩社員にアサーショントレーニングを身につけてもらい、部下を尊重しながらコミュニケーションをとることで、社内のハラスメントを未然に防止できます。

 

指導を受ける立場の社員にとっても、アサーショントレーニングは有効です。上司や先輩社員の指導内容に納得できなかったり、疑問を抱いたりしたとき、アサーションスキルが身についていれば感情的にならずに落ち着いて意見を伝えることができます。

 

③取引先や顧客との対等な立場を維持できる

社員がアサーションを学ぶことで、取引先や顧客と対等な立場でコミュニケーションができ、要望を適切に断ったり、お互いの条件を交渉したりすることが期待できます。相手の状況に理解を示したうえで自社からの対案を提示できるため、取引先や顧客との良好な関係を維持することに効果的です。

 

④ストレスが軽減し、メンタルヘルス不調による休職者が減る

たとえば、ノン・アサーティブタイプの社員が他の社員とコミュニケーションをする時、「自分の意見があっても、場の空気を悪くする気がして言いづらい」と感じることもあるでしょう。また、アグレッシブタイプの社員は他の社員に対して攻撃的で、勝ち負けで物事を決める(いわゆるマウンティングを好み、常に優位に立とうとする)面があり、他の社員がストレスを感じがちになります。

 

社員がアサーションの考え方を身につけることにより、上記で挙げたような対人関係やコミュニケーションにおけるストレスを抱える社員が減ると考えられます。

厚労省の調査によれば、現在労働者の大半が仕事場にストレスを感じており、心の健康状態を失って休職する人は年々増加しています。うつ病や双極性障害などの精神疾患を引き起こすと、回復まで仕事を休む必要があり、その間の人員を補充するため余分な人材コストが必要となります。

 

休職者1名当たりの年間追加コストは422万円※ ともいわれていますから、メンタルヘルス不調による休職・離職は本人にも辛いことですが、会社にとっても大きな損失です。職場の研修にアサーショントレーニングを取り入れることは、これらの事例を減らすのに有効だと言えます。

 

※30代後半、年収約600万円、男性が6ヶ月間休職する場合(内閣府データより)

 

⑤離職率が下がる

離職理由の多くは職場の人間関係にあります。せっかく入社した新入社員が人間関係やパワハラなどが原因で退職することは、人事採用人件費の流出ですから企業にとって大きな損失です。

 

アサーションが注目されている背景として、現在社会全体において多様性(ダイバーシティ)を尊重する姿勢が求められていることがあります。企業においても多様性を尊重するには、社員同士が対等にコミュニケーションを図り、立場や役職を超え、同じ職場の大切な人材として尊重し合える環境を構築しなければなりません。

アサーショントレーニングには、直ちに離職を減らす即効性はないかもしれません。しかし、誰もが働きやすい職場の風土を作るための大切な基盤となることでしょう。

■まとめ

異なる立場にある相手と働くビジネスシーンにおいて、適切に互いの意見を主張して、意思決定していくアサーションの考え方は必要不可欠です。

アサーションとは「自分も相手も大事にして、主張はしっかり行うものの、相手は傷つけない表現方法」です。職場のコミュニケーションにおいて重要なスキルの一つなので、企業でアサーショントレーニングを導入することも増えてきています。

職場でアサーショントレーニングを実践することで、円滑で建設的なコミュニケーションが可能になり、他者との信頼関係を構築できるようになるでしょう。

それは、生産性を高めるだけでなく、自分のストレスマネジメントにも非常に有効です。

ぜひアサーションの考え方を取り入れ、組織内のコミュニケーション品質を向上するのに役立ててください。

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