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職場の部下や同僚がうつ病かも?そんなときどう接するべきかを解説

もし、同僚の異変を感じて「うつ病かもしれない」と思ったら、どうすべきか? 実際にうつ病だと診断された部下に、どのように接したらいいか?そのように悩む方は少なくありません。

さらにポイントとなるのが「休職期間が終わり復職してから」の時期です。うつ病の再発率は60%と言われ、比較的高いことが分かっています。治療が終わって復職したものの、しばらくすると不調が現れ再休職・退職に至ってしまうというケースもよく見られるため、適切な職場での配慮が必要です。

その一方で、「無理させてはいけない」と復職した社員を優遇しすぎると、その社員と他の社員の間に不公平感が生まれるのは避けられません。今回はそれらの悩みに答え、職場の社員がうつ病になったときどのように接するべきかを解説していきます。

 

 

[目次]

■こんな症状はうつ病のサインかも?

■職場のうつ病の部下と接する上で気を付けるポイント

①就業中

②休職中

③復職後

■知っておきたい傾聴のテクニック

 

 

 

■こんな症状はうつ病のサインかも?

 

・うつ病とは?

うつ病は気分障害の一つです。「一日中気分が落ち込んでいる」「何をしても楽しめない」「意欲が湧かない」といった精神症状とともに、不眠症、食欲減退、疲労感といった身体症状が起き、仕事や日常生活に支障をきたします。過労や業務のプレッシャーからうつ病を発症する働き盛り世代の方も多いので、働く人にとっては比較的身近な精神疾患だと言えるでしょう。

うつ病の原因ははっきり分かってはいませんが、脳内の機能に問題が起きている状態だと考えられています。「気の持ちよう」だと思わず、しっかり治療をすることが必要となります。

 

・周りが気づくうつ病のサインとは?

「いつもと違うな」という、次のようなサインがしばらく続いているなら注意が必要です。

 

・以前と比べて遅刻が増えた

・仕事の能率低下やミスが目立つ

・無表情な時が増えた

・何もせず、席についてぼーっとしている

・周囲との交流を避けるようになった

・たまに作り笑いなどして、無理をして笑っている様子が見られる

・顔色が悪い

・表情が暗い、口数が減った

・身だしなみが乱れてきた  等

 

このようなサインが複数見られたら、一度時間を取ってゆっくり話を聴き、専門医の受診を優しく勧めてください。しかし、その時アドバイスをしてはいけません。責任感が強いタイプの人ほど、「私が助けてあげなければ」とアドバイスや励ましをしがちですが、気力が枯渇している本人にとっては負担になることもあります(詳しくは後述の「NGワード」も参照ください)。

 

 

 

■職場のうつ病の部下と接する上で気を付けるポイント

ここでは実際に、あなたが上司の場合うつ病と診断された部下と接する上で気を付けるポイントを解説していきます。

 

①就業中

  • 声かけは率直に、そして共感を示す

治療しながら働ける比較的軽度なうつ病を持つ部下に、「どのように声をかけていいのか分からない」と悩んでいる場合も多いのではないでしょうか。

 

例えば部下が遅刻を繰り返していても、それはうつ病の症状である可能性があります。

あれこれ回りくどいことは言わず、声掛けは「心配している」というスタンスで率直に聞いてみましょう。

例:「最近、遅刻が多いようだけど、仕事に影響が出ていないか心配しているよ。何か困っていることはある?」

何か答えてくれたら「そうだったのか、よく話してくれたね」「辛かったね」と共感を示すようにします。

 

  • NGワードは使わない

次のような言葉は使わないようにしましょう。これは上司という立場以外の、うつ病を持つ人の同僚や家族という立場であっても共通して言えることです。

 

・「頑張って」「やればできるよ」(励まし)

・「何が原因だったの?」(原因を追求する言葉)

・「早く良くなってね」「君が元気でいてくれないと職場の雰囲気も暗いよ」(回復を急かすような言葉)

・「元気?」「大丈夫?」(大丈夫です、と言わせてしまう)

こうした言葉は相手を追い詰め、病状を悪化させるきっかけになることがあります。うつ病は心の問題ではなく脳の疾患であるため、精神的な励ましだけで立ち直れるものではありません。医学的な治療が必要であることを忘れないでください。

 

  • 過度な気遣いをしない

上司や人事担当者は、うつ病が疑われる社員の心理的・身体的状態を把握しておく必要があります。しかし、産業医や保健師から「〇〇に気を付けておいてください」と言われると、そのことを過度に気にかけすぎてしまって、ぎくしゃくしてしまうことがあります。また、繰り返し、いろんな人から「調子はどう?」と聞かれることは、本人にとって負担です。

 

遠慮しすぎもよくありません。「仕事を頼みにくい」など腫れ物を触るような職場の空気を、本人は敏感に察知します。ただでさえ仕事のペースが落ち、通院で早退することがあるなどの状況から「自分は会社に迷惑をかけている」と悩みがちなうつ病の人は、余計に自責の念に駆られてしまいます。

うつ病だからと特別に気を遣わず、今まで通りに接する方がうつ病の人にとっては気持ちが楽なのです。

 

  • 体調不良が続いていたら専門医から指示を仰ぐよう勧める

うつ病を持つ部下本人が「問題ない」と言って出社していても、椅子に座ったままぼーっとしていた李、遅刻や早退が週2回以上続いている場合、仕事を離れゆっくり療養すべきかもしれません。

真面目過ぎるタイプの社員ほど、自覚症状がありながら病院に行かずに放置し、やがて症状が悪化してしまう…というケースがよくあります。症状がなかなか改善せず仕事に影響を及ぼしている場合は、「専門医を受診して相談してはどうか」という提案をすることで、適切な治療につながります。

 

  • 判断に困ったら産業医や保健師に意見を聞く

うつ病の社員に特別な配慮をし過ぎることで他の社員が不公平感を感じたり、仕事のしわ寄せが他の社員にかかり長時間残業などに苦しむこともあります。うつ病の社員への配慮が適切か、それとも行き過ぎた配慮なのか、その線引きが曖昧だと職場の統率が守れなくなります。

 

うつ病の症状と仕事の遂行能力低下に因果関係があるかどうかを判断するために、専門家の意見を聞くことは助けになるでしょう。社内であれば産業医や保険師、社外であれば会社が契約しているEAP(従業員支援プログラム)、都道府県の精神保健福祉センターなどに相談してみてください。

 

大切なのは、自分一人で解決しようとしないことです。特に人事や上司が注意しなくてはいけないのは“病気”・“休職”の判断です。必ず医師の判断を仰ぎ、素人判断はやめましょう。

 

②休職中

  • 頻繁に連絡しない

休職中は仕事から離れ療養に専念すべき時期です。そんな時に上司や同僚から頻繁に連絡が入ると、それに応えないといけないためストレスになってしまいます。

 

また、配慮や楽しませる気持ちから「あなたが休んでいる間に職場ではこんなことがあってね」と情報を提供したくなることもあるでしょうが、うつ病の原因が職場の人間関係だった場合に、嫌な事を思い出してしまいます。

 

ただ、時折短いメッセージをもらえると「自分は忘れられてないんだな」とうれしい気持ちになるものです。「また会えるのを楽しみにしています」というメッセージを伝えてあげましょう。

 

休職中の社員は、症状の回復への不安と共に、回復後に復帰できるかという不安を抱えています。「会社に迷惑をかけてしまった」「将来の出世に悪影響があるのでは」と焦って復職しても、3ヶ月から半年の期間で再度不調に陥るケースがみられます。休職中の定期面談では、慌てず療養するよう伝えるようにしてください。

 

③復職後

復帰する際のリハビリ出勤の支援、復帰後に無理をさせないような仕事面のケアを行ないます。復帰のタイミングに関しては、休職の判断と同じく担当医の診断結果や見解をしっかりと聞き、本人・人事や上司・専門医で話し合い、決めましょう。

 

復職したばかりの頃は本人も張り切っていて、少し無理がきいてしまいます。その無理が蓄積され続けると、うつ病の再発につながります。最近また遅刻や仕事のミスが増えてきた、口数が減った、身だしなみが乱れてきた…  などのうつ病のサインが再び現れていないか、日常的に観察するようにしてください。

 

 

 

■知っておきたい傾聴のテクニック

「傾聴」とは、相手の話にじっくりと耳を傾けるコミュニケーション技術です。話に耳を傾け、共感を示すことで、うつ病の社員以外の同僚・部下とのコミュニケーションにも応用できます。

 

・傾聴することで得られるメリット

傾聴は、相手の思っていることを受け入れ理解を示すことにより、話す側の心の負担を軽くする効果があります。ビジネスシーンでの合理的な業務報告(報・連・相など)には含まれない、「自分の思い」に耳を傾けてくれる人がいると精神的な安らぎにつながります。

適切に傾聴すると、「相手が自分から話してみたくなる」気持ちを引き出せるので、部下が心を開き、信頼関係の土台が築ける効果が期待できます。

 

・傾聴のポイント

ここでは簡単に傾聴のポイントを解説します。

①相手を否定しない

最も重要なポイントは相手の話を否定しないことです。話を聞いているうちに矛盾点や事実と違う部分がでてきたとしても、「いや、違うよ」「でもそれは」と否定しないようにします。自分の考えを押しつけたくなっても、相手の話を否定せずに「ただそのまま聞く」ことが基本です。

 

②話を遮らずに最後まで耳を傾ける

途中で相手の話を止めて「私の時はね…」と自分の意見を話さないようにします。まず、相手が一通り話し終えたところで質問をしたり、共感の言葉を入れたりします。

 

③共感を示す

肯定的な関心を持ちながら、相手の立場を想像しながら話を聞き、「大変だったね」「辛かったね」と共感を示しましょう。ただ安易に伝えてしまうと、「簡単に理解されたくない」と思われる可能性があります。まずしっかり耳を傾けて、相手の話が終わったら初めて共感の言葉を添えるようにしてください。「同調・同意」のように、100パーセント相手の話を肯定する必要はありません。

 

傾聴については、研修を行っている協会などもありますし、本やHPを参考にすることもできます。

厚生労働省「こころの耳・働く人のメンタルヘルスポータルサイトより 話を「聴く」~積極的傾聴とは~」https://kokoro.mhlw.go.jp/listen/listen001/

 

 

■まとめ

上司や同僚として、職場の社員のうつ病に気付いてどんな風に接するべきかを解説してきました。

部下や同僚の不調に気づくには、日頃からその人の様子を見ておく必要があります。それが早期発見・早期治療につながることもありますが、全て自分の力で解決しようとしないでください。うつ病は心の問題ではなく脳の疾患であるため、精神的な励ましだけで立ち直れるものではなく、医学的な治療が必要なのです。

過度な遠慮はせず、しかし困ったときに話を聞けるような環境を作るようにしましょう。

また、適切な判断に迷う場合は社内外の専門家に意見を聞くようにしてください。

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