精神疾患や発達障害で仕事を一時的に離れて、さあそろそろ再就職したいな…と思ったとき、どんな人でも「自分に向いている仕事って何なんだろう?」という考えが頭をよぎると思います。
転職活動でまず初めにすべきことは、自己分析です。自分のキャリアの棚卸しをして、何が自分の長所なのか、どんなことで企業にアピールできるかを考えていきましょう。ここではそのやり方を解説していきます。
[目次]
■キャリアの棚卸しとは?
■キャリアの棚卸しのやり方
■何があなたの「長所」?企業にピールするポイント
■あなたの仕事に対する姿勢、価値観は?
■仕事を選ぶ上での優先順位は?
■さいごに 第三者の意見を聞くことで自分に向いている仕事が見えてくることも
■キャリアの棚卸しとは?
皆さんは、自分に合った仕事を探すとき、何から始めますか?求人サイトで検索や、ハローワークに行くこともあるかもしれません。
しかし、まず一番初めにすべきなのは「キャリアの棚卸し」です。
「キャリアの棚卸し」とは、これまで携わってきた仕事について書き出し、整理していくことです。
・キャリアの棚卸しから得られること
キャリアの棚卸しをすると、具体的に何が見つけられるのでしょうか?
大まかには、以下の3つがあります。
- 企業にアピールできるスキル
- 過去の仕事での実績
- あなたの仕事に対する姿勢
これらを整理しておくことで職務経歴書をまとめやすくなりますし、自分が好む仕事の方向性も自ずと見えてきます。
■キャリアの棚卸しのやり方
キャリアの棚卸しには、正解という方法は本来ありませんから、まずは肩の力を抜いて思いついたことを書いていきましょう。
ステップ1:まずはA4の白紙を用意します(何枚か使ってOKです)。
ステップ2:一社ずつ棚卸ししていく
今まで取り組んだ仕事について、具体的に書き出していきます。
この時、①一番初めに働いた会社から順番に書く(時系列順) でもいいですし、
②一番記憶に新しい、直近の仕事から始めて遡っていく(逆時系列)でも構いません。
どちらか書きやすい方を選んで書き進めていきましょう。会社の中で当たり前のようにしていた仕事を、第三者にも分かるように説明するのは難しいこともあります。
ですが、この棚卸し表は誰に見せるわけでもありませんから、どんどん書き出していきましょう。
書く項目は以下のような内容です。
- 「会社名」
- 「会社の業種」
※建設業、製造業、サービス業など、会社が何業界の会社か書きます。分からない場合は会社のHPなどを参考にしていてください。
- 「部署・役職」正社員以外のアルバイトの経験も書きましょう。
- 「その時のあなたの業務内容」
※毎日同じ仕事をしていたのであれば、主な1日の仕事内容で構いませんよ。
- 「仕事の実績」
※ここは詳しく書いていきましょう。●年勤務、毎月●●●万円売上達成など、なるべく具体的な数字が入れるのが理想です。
しかし、職種によっては具体的な数字で表現できない場合もありますから、もちろん数字が入っていなくても構いません。
そのような場合は任せられていた仕事について、どれだけのスピード、どれだけの量をこなしていたかを書くと、あなたへのスキルへの理解が深まります。また、仕事上で特に意識していたことなども書きましょう。
- 「習得したスキル」
※その仕事をした中で伸ばせた能力・得ることができた知識などを記入します。覚えたPCスキル、ソフトなど
もあれば記入します。
- 「入社理由・退職理由」「楽しめた所・辛かった所」
※これは誰に見せるわけでもないので、本音で書いてOKです。
入社時と思っていた仕事と違った、仕事のスピードに追い付けなかった、一人でできる仕事は楽しかった、などと書いていくと、自分が望む働き方が言語化できてきます。
ステップ3:残りの仕事についても書いていく
沢山の仕事を経験している場合、棚卸も大変かもしれません。ですが、学生時代楽しめたアルバイトや、短期間ではあったが印象的な仕事なども、書いてみると自己理解が深まります。
これで、「仕事の 棚卸シート」の完成です。上手く書く必要はありませんから、心配しないでくださいね。
■何があなたの「長所」?企業にピールするポイント
では、書いてみた棚卸し表を見てみましょう。
ちょっと、このままでは何をどのようにアピールしていいのか分からないかもしれませんね?
あなたの「実際の経験」をそのまま説明してもよいのですが、「次の会社でどのように活かせそうか?」という書き方にしないと、企業側にあなたを採用するメリットが伝わりづらいからです。
ですから、先ほどの「仕事の棚卸シート」の中から、他の会社でも活かせる「長所=スキル」にまとめてみましょう。
A4の紙を再び用意してあなたのスキル=長所をまとめていきます。
仕事上のスキルを、ここでは3つに分けてみました。
- ヒューマンスキル〈対人関係の能力〉
人間関係を良好に保つためのコミュニケーション能力、相手の気持ちを汲み取りながら仕事を進めていく能力などのことを言います。
誠実さや気配りができること、積極的に周囲に働きかけリーダーシップを取るなど、職場での人間関係でもメリットになりそうなことがあればヒューマンスキルとしてまとめておきましょう。
- テクニカルスキル〈専門的な能力〉
企業で活かせる技術や資格、パソコンスキル、専門知識などです。例えばSEを経験していて、次もSEを募集している会社を志望する場合、前社でのSEで培った経験や知識はそのままアピールできるでしょう。
具体的な仕事内容と実績と共にまとめます。また、同じ業界内での転職を志望する場合、業界での経験は立派な実績となります。
- ポータブルスキル〈持ち出し可能な能力〉
例え業種や業界の違う会社でも通用する「ビジネススキル」がポータブルスキルに該当します。
ビジネスマナー、プロジェクトをチームで行って成果を上げたこと、自分で日々の行動管理をして目標達成してきた、新規顧客の開拓が得意だった、などの実績をまとめてみましょう。
転職活動では、自己PRをする場面がありますね。ここであげた3つのスキルのうち、2つを組み合わせると、
自己PRとしてほぼそのまま使えます。
例:「ヒューマンスキル+ポータブルスキル」
誠実で協調性があり、仕事のリスク管理ができる+プロジェクトリーダーとして●人のSEチームをまとめ●●と
いう業績を残せた。御社でもそのスキルを活かして貢献できると思います。
■あなたの仕事に対する姿勢、価値観は?
また新しいA4の紙を用意し、あなたの仕事に対する姿勢や価値観を書いていきます。
棚卸しシートや自分のスキルを書いているうちに、その時どんな気持ちで仕事に取り組んでいたか、どんなことを目標に頑張っていたかなどを思い出してくるかもしれません。
そのような記憶や感情から「あなたが仕事を頑張る上でのモチベーションが何なのか」「仕事や会社に求めるものなどは何なのか」という、仕事に対する姿勢が見えてきます。
「早起きしなければいけないのが辛かったから、次は勤務地が近い会社がいい」
「仕事のやりがいも大事だけど、それよりも人間関係が穏やかな会社で働きたい」
「精神障害を同じ職場の人に理解してもらえていたから、嬉しかったし、仕事も頑張れた」
など、自由に書き出していきます。
ここで書き出しておくと、実際に仕事を探す上での「譲れない条件・譲れる条件」を見つけやすくなります。
■仕事を選ぶ上での優先順位は?
最後に、実際に仕事を探す上での「譲れない条件・譲れる条件」を出してみましょう。
- まずは、絶対に譲れない条件を書き出します。
例えば、
・ 最低でも手取りの給料が14万円以上
・障害に配慮してもらえる(オープン就労)
・勤務時間は6時間以内
・難易度の高くない仕事 など。
そして、今度は譲ってもいい(妥協できる)条件を書いてみます。
例えば、
・できれば正社員がいい(見つからなければ派遣やアルバイトでもいい)
・できればオフィスワークがいい(見つからなければ工場勤務でもいい)
・できれば通勤時20分以内(見つからなければ30分以上でもいい)
・やりがいのある仕事がいい など
- 次に、「譲れない条件」「譲ってもいい(妥協できる)条件」に、それぞれ優先順位を付けます。
「譲れない条件」
1位、2位、3位…
「譲ってもいい(妥協できる)条件」
1位、2位、3位、4位…
- 仕事を選ぶときは、「譲れない条件」を軸に考えます。
ここを妥協してしまうと、入社したもののストレスで体調を壊してしまったり、休職や退職になってしまうかもしれません。
社会経験のしっかりした方なら、前社の経験を活かせる仕事が譲れない条件だということもあるかもしれません。
しかし、そうするとどうしても募集人数は少なくなります。障害のことをそのまま伝えるとどうしても不利になりますから、障害をどのようにカバーしているのか、という工夫を必ず伝えるようにしましょう。
■さいごに 第三者の意見を聞くことで自分に向いている仕事が見えてくることも
以上、キャリアの棚卸しや仕事を探す軸について解説してきました。
就職活動で一番初めにすることは、自己分析です。自分のキャリアの棚卸しをして、何が自分の長所なのか、どんなことで企業にアピールできるかをまとめていきましょう。
棚卸しや自分のスキルを書きだすには時間がかかります。何日間かかけて少しずつ書いていきましょう。
一度書き出してまとめておけば、面接などでもすらすらと話しやすくなります。
精神疾患を持ちながらの転職活動はなかなか一人では難しいかもしれません。なかなか仕事が長く続かない…
と悩んでいる場合、障害者就業支援センターや就労移行支援事業所を利用してサポートをもらうのもお勧めです。
また、リワークの事業所では、職場に復帰するためのリハビリやスキルアップをしながら、今後のキャリアについても相談できます。
第三者の意見を聞くことで自分の意外な長所に気付けたり、向いている仕事が見つかるかもしれません。自分らしく働く足掛かりにしていってくださいね。