メンタルヘルス不調と診断されると、医師の判断のもと治療が進められ、臨床心理士、公認心理師からカウンセリングを受けることを勧められる方もいます。
カウンセリングとは「専門知識を持つカウンセラーと患者との対話を通じて、患者の自己解決を援助するもの」です。カウンセリングに興味があっても、自分には効果があるのだろうか?と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、カウンセリングにどのような効果があるか、どのような人がカウンセリングを受けられるのかなどについて解説していきます。
[目次]
■カウンセリングとは?どんな人が受けられるの?
■カウンセリングで得られる効果は?
■カウンセリングに効果がないと感じた時に注意したいこと
■カウンセリングとは?
カウンセリングとは、専門知識・技術を持つカウンセラーと患者(クライエントと言います)との対話を通じて、患者の抱える問題の自己解決を助けるものです。
カウンセラーが患者に助言をし、患者を導くのだと思われがちですが、そうではありません。
会話などのやり取りを通じて、患者が自身の抱える問題に対する気づきを得たり、自己理解を深めたり、自分の
行動の変化させることへの手助けがカウンセリングの目的なのです。
・どこでカウンセリングを受けるのか?
精神科・心療内科では治療の一つとして、心理療法(カウンセリング)を取り入れています。この記事を読まれている うつ病のかたなどで、精神科などの医療機関でカウンセリングを受けた経験があるかたもいるかもしれません。
心理療法(心理カウンセリング)は、「臨床心理士」や「公認心理士」と言われる資格を持つ医療従事者によって行われます。マンツーマンでのカウンセリングが基本ですが、状況によっては家族などが同席して行われることもあります。
■カウンセリングを受けられる人はどんな人?
カウンセリングが適用と判断されるのは、次のような場合です。
〇 患者自身が、落ち着いて考え、話せるような状態である
カウンセリングはカウンセラーとの対話という形で行われます。ですから、話すこと自体が難しい場合や、精神不安定な場合、また患者にとって精神的・肉体的に負担が大きい場合には、休養の方を優先すべきなのでカウンセリングの適用とはなりません。
〇 心理的要因や周囲との関係性の問題でメンタルヘルス不調に陥った
メンタルヘルス不調の人が発症に至った経緯を聞いていくと、本人の気質や物の捉え方、行動パターンなどが影響していることはよくあることです。
例えば、うつ病の有効な治療法は薬物療法と休養ですが、薬物治療と休養で休職中に心身が回復したとしても、職場復帰すればまた同じような悩みや困難さにぶつかります。ストレスから以前と同じような症状が再発してしまうかもしれません。
ですから、症状の治療のみならず、性格や物事の考え方などを修正していくこと、コミュニケーション能力やストレスマネジメント能力を向上させること、もちろん必要な時には環境調整への働きかけをしていくことが根本解決に不可欠なのです。
〇 費用面を負担ができる
医師がカウンセリングを行う場合は保険が適用されますが、それ以外のカウンセリングは基本的に自由診療となります。機関によりますが、費用は1回(60分)で一万円前後かかります。カウンセリングは継続して受ける必要がありますので、経済的な負担が大きくなります。
〇 本人にカウンセリングへの動機付けがある
カウンセリングは、患者が主体的に取り組む姿勢がないとよい効果が出ません。いくら医師がカウンセリングを勧めたとしても、本人が問題を解決しようとする意志がなかったり、正直な気持ちを話さなかったりすれば効果が出づらくなってしまいます。
カウンセリングを受けたいと思った場合、自分にカウンセリングが適用されるのか、まずは主治医に相談してみてください。
■カウンセリングで得られる効果は?
カウンセリングにおいて、患者はカウンセラーとの会話の中で、自分の課題に気づいていくことになります。
例えば、うつ病の方は真面目で、何事も完璧にやらないと気が済まない性格の方が多いと言われていますが、その生真面目な性格から強いストレスを感じてないか、患者自身に振り返ってもらいます。そして、よりバランスの取れたものの見方、例えば「完璧な人などいない」「仕事は互いの欠点を補えるチーム作業だ」などバランスの取れたものの見方、行動に変えていきます。
■メンタルヘルス不調の人がカウンセリングを受けるメリット
メンタルヘルス不調を抱えている方が カウンセリングを受けるメリットは、次のようなものがあります。
- 心が楽になる
メンタルヘルス不調で悩む方は、周りの人にも辛さを話せないまま、自分の中で苦しみを抱えていることが多いです。自分の気持ちを誰かに吐き出せると気持ちがスッキリし、心が楽になります。
平均的に、カウンセリングは1回につき1時間程度取られます。始めは「何から話してよいかわからない」と思うかもしれませんが、カウンセラーが上手く質問をしてくれ、気持ちを引き出してくれます。人に話すのが情けない、みっともない、辛い…といった内容でも、話を聞き受け止めてくれるので安心してください。
- 漠然と悩んでいたことを根本的に解決に導ける
相談に来る前は、「漠然とした大きな悩み、解決の見えない問題」となっていることが、カウンセラーと話しているうちに整理され、何が本当の原因でどういう考え方をしたらいいのか、という悩みの本質的な解決が目指せます。
- 自己理解が高まり、病気の再発防止につながる
第三者であるカウンセラーとの対話を通して、自己理解が進みます。患者が自分の考え方や行動を少しずつ修正していくことで、病気が再発しづらくなります。
- 職場の人間関係が楽になる
カウンセラーは、患者の話を聞きながら、患者の周りにいる人のことも冷静に分析しています。問題の原因が患者自身だけでなく、患者の周囲の人間にも関係しているケースがあるからです。
メンタルヘルス不調を抱える人の中には、自分のことを責めがちな性格の人もいます。しかし、実際話を聞いていると、上司や同僚にも問題があることもあります。
「自分は職責に見合った仕事ができないのだから叱責されても仕方ない」と思わず、「この人はこういう性格だから気にし過ぎないでおこう」と割り切った考え方を採用できれば、人間関係も楽になるかもしれませんよね。
職場のことを知らない第三者であるカウンセラーと対話をしている中で、周囲の人の性格や職場の人間関係など
の状況も整理でき、その後の人間関係がスムーズになっていきます。
- 話を否定せず聞いてもらえる
身近な家族や友人に相談をすると、話の半ばで「それはこうしたほうがいい」と遮ってアドバイスをされることがあります。
カウンセラーはあなたの話に価値判断せず、ただ最後まで聞いてくれるでしょう。自分の気持ちを理解してくれる人がいるということが心の安らぎに繋がります。
■カウンセリングの流れ
カウンセリングには3つのステップがあります。初期・中期・後期と段階を踏んで心理的安全さを築いたのち、カウンセラーは患者の悩みを聞いていきます。
- 初期
病気や、仕事や未来への不安、家族関係の悩みなど、非常にプライベートなことを話すわけですから、カウンセラーとの間に信頼関係は必須です。
初期では、患者が落ち着いて悩み事を話せるように、カウンセラーは患者との間の心の壁を取り除いていきます。
- 中期
患者が次第にカウンセラーと打ち解けてきたら、次はより深く問題を掘り下げていきます。患者のものの考え方や捉え方、人生のバックグラウンドなどを注意深く観察し、なにが問題なのかを専門的に分析してきます。
また、本人に解決に向け変わっていく意志があるのか、どう変わりたいと思っているのか、などを会話の中で観察することで問題解決の糸口を探ります。
カウンセリングは一度では終わるものではなく、回数を重ねるたびにカウンセラーは問題をどのように解決していけるのかを一緒に考えていきます。
- 後期
カウンセリングを終える段階に入っていきます。ずっと話を聞いてもらってきたカウンセラーと離れることで
不安を起こさないように関わっていきます。
■カウンセリングに効果がないと感じた時に注意したいこと
「カウンセリングを試しに受けてみたが、効果がなかった」という方がいます。
そのような場合、どう考えたらよいのでしょう。
実は、初めてのカウンセリングでは効果を実感しづらいこともあるのです。
カウンセリングで効果を上げるには、まず心を開き、カウンセラーに本音で話す必要があります。誰しも、初対面の人に心を開くことは難しいものですから、はじめから完璧に成果を上げようとしなくて大丈夫です。
何度かカウンセリングを続け、カウンセラーと顔を合わせる回数を重ねていくことで心の距離が近くなり、自然と本音で話せるようになるでしょう。
■一時的にしんどくなることも
長い間で作られてきたものの見方や考え方を変えることは、大半の人にとって大きな変化なので、一時的に混乱や、辛さを感じる人もいます。
続けることが負担だと感じるときは、機関に話してカウンセリングを受けるべきかどうか、指示を仰ぐようにしてください。
■まとめ
カウンセリングのゴールは、対話を通じて患者自身が自分の課題に気づき、自分の考え方や行動を変え乗り越えていくことです。
カウンセリングには、患者の心を楽にしたり、頭を整理できたり、心理的な課題を根本的解決する役割があるので、メンタルヘルス不調の方には有効です。
患者自身で考え、解決していくため治療にはそれなりの時間がかかりますが、病気の再発防止にも有効となります。
初めのうちは、効果が感じられないと思うこともあるかもしれませんが、可能な限り継続して続けていってみてください。