12月の忘年会シーズンが終わりを迎え、今度は1月の新年会がお酒を飲むことが増えるこの時期。そして、仕事で溜まったストレスを、お酒を飲むことで解消したり、また、眠れないからお酒を飲むといった人もいるのではないでしょうか。
お酒は適量であれば、一時的な解放感やリラックス感を味わうことができますが、一方、飲み過ぎやアルコール依存により、睡眠の質の低下や、メンタル不調の誘発につながります。そのこと自体は、みなさんボンヤリとは理解されているかと思うのですが、具体的なメカニズムをご存じない方が多いかと思います。
そこで今回は、アルコール依存における、睡眠の質低下や、メンタル不調につながる、具体的な要因やメカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
[目次]
■睡眠時間が7時間以下になることでの心のリスク
■アルコール依存が、睡眠の質低下やメンタル不調に陥る影響は?
■アルコール依存の対策は?
■睡眠時間が7時間以下になることでの心のリスク
まず、睡眠の質が低下することで、どのようにメンタルに影響が出るかお伝えします。2018 年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、1日の睡眠時間が7時間以上の人の割合が、27.4%という統計が出ています。言い換えれば、日本人の7割以上が、7時間睡眠を切っています。
実は、1日の平均睡眠時間が7時間睡眠から6時間睡眠減るだけで、なんと精神疾患に陥るリスクが6倍になります。世界比較でみても、日本人の睡眠時間は最低レベルで短いです。日本では睡眠時間を削ってでも仕事をすることに美徳を感じる価値観もあり、その結果メンタルの不調に結びつきやすいと言えるでしょう。
■アルコール依存が、睡眠の質低下やメンタル不調に陥る影響は?
その① アルコールは、脳を気絶させるものだと捉える
1つ目は、「アルコールは眠れる道具ではない」というものです。「仕事のストレスで眠れないから、お酒を飲んで寝る」という方がいらっしゃるかもしれません。ですが、これは、睡眠対策として大きな勘違いなのです。なぜかというと、アルコールには、理性を司る大脳を鎮痛させて、麻酔に近い脳波が起きる作用があります。つまり、お酒を飲むと、「眠れる」ではなく、実は「脳が気を失って気絶している」と思っていただけたらと思います。
また、睡眠の後半に体内のアルコールが消えると、睡眠が断片的になり、睡眠の質が一気に低下します。その結果、寝ても疲れが取れなくなってしまいます。また、睡眠の質が下がると、もっと多くお酒を飲まないと眠れないんじゃないかという脳の思考に陥ってしまい、飲酒量がさらに多くなってしまう悪循環に陥ります。ちなみに、お酒のみならず、睡眠薬にも同じことが言えます。
その② アルコール依存はレム睡眠を奪う!
睡眠サイクルというのはご存じでしょうか。
適切な睡眠であれば、寝始めると、まずノンレム睡眠という深い眠りにつき、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠に移行します。これを繰り返し、徐々に脳がスッキリして目覚めるのです。
ここで、ノンレム睡眠とレム睡眠の役割をお伝えします。
深いノンレム睡眠では、
・学習した記憶を脳に定着させる
・脳の老廃物を排除し、アンチエイジング
といった役目があります。
一方、レム睡眠では、
・過去の記憶や情報の統合を行い、創造性を生み出す
・夢の中で不快な記憶を処理し、心を安定させる
・認知力、EQ、社会適応能力を向上させる
といった役目があります。
その上で、ここからが大事なのですが、アルコールは、レム睡眠を奪います。
その結果、
・状況を適切に判断できなくなる
・感情的になり、良い人間関係が作れなくなる
・物事を多角的に見られなくなる
・コミュニケーションなどの社会適応能力が育たなくなる
といった心身への影響のリスクが起こります。
その③ アルコール依存により、睡眠中の不安ホルモン(ノルアドレナリン)が一掃しない。
ハーバード大学の研究によれば、その日起きた出来事に対しての感情の35 ~ 55% はその日の夢に現れます。そして、夢の中で不快な記憶を処理し、心の安定をはかります。実は、レム睡眠中に、不安ホルモン(ノルアドレナリン)を一掃する働きがあります。その際、記憶から怒りや悲しみや恐怖といったネガティブな感情が抜き取り、経験や学びに変える心になれます。
その上で、先述したように、アルコールを飲むと、レム睡眠を奪います。つまり、お酒に依存すると、ネガティブな感情がなかなか消えず、精神疾患に陥ってしまうリスクが高まるのです。
その④ アルコール依存による、副腎疲労による睡眠の質低下とメンタル不調
副腎疲労について、なじみがない方がきっと多いのではないでしょうか。副腎は、ストレスと闘う重要な臓器で、副腎疲労は、現代人が陥ってしまう、睡眠やメンタル不調の要因の1つです。副腎疲労の要因の1つとして、実はアルコール依存が関連します。
具体的に、どのようなプロセスで副腎疲労が起こるというと、
- 脳がアルコールを感知してストレスを感じる
- 脳→視床下部→下垂体→副腎の流れで、ストレス対処の指令が届く
- 副腎皮質より、抗ストレスホルモンのコルチゾールを分泌していき、ストレスを和らげる。
このコルチゾールは、多少の事では枯渇せず悲鳴をあげないのですが、数年単位で疲労が蓄積することで、分泌が枯渇していきます。副腎疲労に陥ると、睡眠への影響が出ます。具体的には、夜深い時間から覚醒してしまい元気になり、朝起きることが苦手になります。その結果、特に出勤時間が早い方にとっては、睡眠不足→メンタル不調に陥るリスクが高まります。
そのコルチゾール分泌を促進してしまうのが、仕事上のストレスのほか、アルコールも要因になります。
■アルコール依存の対策は?
ここまで、お酒が睡眠や心に影響を及ぼす要因やメカニズムについてお伝えしました。
逆に言うと、ストレスによるアルコール依存から抜け出すことができると、睡眠やメンタル面において次のような結果がしっかりと得られるでしょう。
・日中のパフォーマンスが上がる
・集中力アップ
・睡眠中に、ネガティブな嫌な記憶を消してくれて、日中笑顔で心穏やかになる
・感情的にならず思いやりのある人間になれる
・人間関係が良くなる
・自分の周りに人が集まる。
・あなた自身がイキイキ生きられる
・日中溜まった仕事が、スラスラ片付く
・午後からも集中力キープ!
・仕事のアイデアがどんどん思い浮かぶ!
では、そこまでの結果を得るためにはどうしたら良いかというと、ありきたりな助言ですが、お酒の量を徐々に減らしていくしか現実的な選択肢はありません。
その場合、解決の大まかな方向性は、ストレスが溜まるとお酒へ依存してしまうルーティンに気づき、脳の意識を修正することです。
では、どのように意識したら良いのでしょうか。ここでは、以下の2つの方向性をお伝えします。
① 気が付いたストレスに向き合い、思考を修正すること
お酒を飲んでも、一時的に目先の気分がごまかされるだけです。ストレスが消え去るわけではありません。これはお酒だけではなく、タバコや、先述した睡眠薬にも言えます。それが続くので、無意識で、習慣化してしまいます。アルコール依存は、習慣化であり、それから抜け出すのは、脳が認識する習慣を変えていくことが必要です。
では、習慣を変えていくにはどうしたら良いかと言うと、自分のストレスの原因が何で、どのような思考の癖を持っているか、そしてなぜストレスのはけ口がお酒につながるか気づき、その執着した考えから手放すことが根本のスタートです。
そうはいっても、自分ではなかなかうまくいきません。詳しくは、アルコール依存の専門家、カウンセラーに話を聞いてもらいましょう。心の奥に溜まっている胸の内を出すだけでも、心がスッキリし、ポジティブな気持ちを取り戻せます。
②お酒以外の、自然と入眠できるための習慣を身に付ける
お酒を飲む時間帯は、おそらく夜が多いと思うのですが、お酒に頼らない入眠方法を学び、それを実践していくことです。そうすると、深く眠りにつき、脳がスッキリして日中の仕事がはかどり、人間関係の揉め事も感情的になりにくくなります。
具体的な実践として、例えば、よく就寝の90分前に入浴をすると眠れるという話をよく耳にします。なぜかというと、40℃のお湯に15 分浸かると、深部体温(脳と内臓の温度)が0.5℃上昇します。そして、上昇した深部体温が元の体温に戻るには90分必要ですが、その差で人は眠れるのです。
また、就寝の3時間前に、夜、少しだけジョギングやヨガなどの有酸素運動をするのも、入眠しやすくなります。有酸素運動も深部体温が上がります。下がる過程で入眠しやすくなるのは、今お伝えした通りです。ただし、激しい運動は、自律神経が興奮してしまい、脳が覚醒してしまうので、お気をつけください。
眠る直前には、ラベンダーのアロマを嗅ぐこと、焚くことをおススメします。ラベンダーは、心の鎮痛作用があり、リラックス効果が得られます。
このように、お酒の力を借りなくても、自然と夜眠りにつくルーティンをつくり、習慣化すれば、自然とアルコール依存から離れることができます。
■まとめ
今回は、飲酒によるアルコール依存が、睡眠の質低下やメンタル不調に陥るメカニズムや、対策をお伝えしました。本記事が、少しでもアルコール依存の抑制力につながればと思っております。
ただ、アルコール依存に陥ることは、先述したようにストレスをお酒で解決するという習慣になっており、一人で解決するのは難しいものです。ぜひ、1人で抱え込まず、アルコール依存の専門機関やカウンセラー、睡眠改善の専門家を積極的に頼るように、社会的治療も視野に入れてみてください。