2025.11.4
「何でも話していいですよ」って言われても、頭の中は真っ白。
病院の診察室って、なぜあんなにも口が重くなるんだろう。
私はもともと人見知りだけど、それだけじゃない。
診察室では時間が限られているし、なんとなく“ちゃんとしたこと”を言わなきゃって思ってしまう。
その結果、本当に言いたかったことほど、飲み込んでしまう。
たとえば「最近、夜中に何度も目が覚める」とか「ふとしたときに涙が出る」とか。
こういう細かいことって、口に出すと大したことじゃない気がして、黙ってしまう。

診察が終わって家に帰ると、「ああ、あれも言えばよかった」って後悔する。
そして、「私はコミュニケーションも下手なんだ…」と自分を責める。
悪循環のループ完成。
自立訓練で話したとき、スタッフさんにこんなことを言われた。
「診察って、プレゼンの場じゃないよ。完璧に話す必要なんてない」
そう言われて、少し肩の力が抜けた。
先生にわかってもらうために、立派な説明をする必要はない。
とりあえず、「なんとなく元気がない」「よくわからないけど気持ちが落ちる」でもいいらしい。
それから私は、診察の前にスマホのメモに一言ずつ書くようにした。
「寝つきが悪い」「朝だるい」「人と会いたくない」など、短い言葉だけ。
診察室では、それを見ながら伝える。
全部は話せなくても、一つでも伝えられれば進歩だと思うようにした。
正直、まだ先生に全部をさらけ出せるわけじゃない。
でも、ちょっとずつ話せることが増えてきた。
心を開くって、いきなり全開にするものじゃなくて、少しずつ隙間を広げていく感じなんだと思う。
診察室を出るとき、ほんの少し「言えたぞ」と思える日は、帰り道がいつもより軽い。