もしもメンタルヘルスの不調で休職になった場合、どのように過ごすとよいでしょうか?
休職期間の前半は仕事から離れ、心身を休める時期です。そしてしっかり休んだ後半は会社に復帰をするための準備に当てましょう。
ここでは、休職期間を有意義に過ごすため、休職中にしてはいけないこと・するとよいことを解説していきます。
[目次]
■メンタルヘルス不調で休職する前にすること
■休職前半にしてはいけないこと・すべきこと
■ 休職後半にしてはいけないこと・すべきこと
■メンタルヘルス不調で休職する前にすること
・メンタルヘルス不調とは?
厚生労働省の指針によると、「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」とされています。
メンタルヘルス不調の状態は「ストレス過多状態」と言い換えることもできます。仕事量の多さ、疲労、職場の人間関係や周囲からのプレッシャーなどが強いストレスになり、身体や行動、また精神面に異変が起きている状態です。このような不調は病気ではありませんが、長い間ストレスにさらされ続けるとうつ病などの精神疾患に進行します。
・休職とは?
休職とは、雇用契約を維持したまま労働を免除、または停止させる措置のことです。
休職制度自体は労働基準法やその他の法令に定められた制度ではありません。しかし多くの企業で取り入れられている制度です。申請するにあたって、就労できない理由を示す文書や医師の診断書を提出する等の条件を満たす必要があります。正確には、会社の就業規則を確認してください。
・メンタルヘルス不調で休職する前にすること
休職の手続きをする際、多くの会社では医師の診断書が必要になります。まず、かかりつけの病院で専門医による診察を受けて診断書を発行してもらいます。しかし、診断書の発行まではある程度時間かかることが多いので、不調を感じた際は早めの受診をお勧めします。
診断書が発行されたら、上司や人事担当者などと面談をし、会社に休職を申請します。休職期間は診断書に書かれている休養期間をもとに、会社側と相談して決めることになります。
・会社との連絡方法を決めて休職する
休職に入る前に、人事担当者や上司との間で 会社との連絡方法 を決めておきましょう。連絡方法はメールでも電話でも構いませんが、人事担当は療養中の職員の状態を把握する必要があるので、会社からの連絡には応えないといけません。
また、状況報告のタイミングも決めておくとスムーズです。例えば、ひと月に1回上司に報告する、通院時の医師からの受診結果を報告する、診断書の有効期限が切れる前に体調について報告するなどです。もしくは、会社の上司が定期連絡を入れる、という場合もあるかもしれません。
また、メンタルヘルス不調で休職する際には給与のこと、傷病手当制度が使えるかなど、確認すべきことがいくつかあります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
リンク→うつ病などメンタルヘルス不調で休職するときの5つの注意点
■休職前半にしてはいけないこと・すべきこと
メンタルヘルス不調により休職した直後は、いつもと違う自分の体調に戸惑うことが多いです。出社せずに自宅で療養しているとはいえど、精神的に辛い時期です。
ここでは療養前半のおすすめの過ごし方をご紹介します。やってはいけないことや注意が必要な過ごし方についてもお伝えします。
・療養前半におすすめの過ごし方
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心と身体を休ませる
休職したばかりの時期なら、あなたは「職場の人が働いているのに自分だけ休んでしまって申し訳ない」「ただ休んでいないで、何かしたほうがいいのでは」という気持ちを感じるかもしれません。しかし、医師から「治療に専念することが必要」と診断され休職になっているのですから、まず心身をゆっくり休ませてください。頑張ってきた人ほど、職場に穴を開けたと自分を責めてしまいますし、ハードな職場から抜けてきた場合「残された社員は大丈夫だろうか」と心配になりますが、それは人員の調整などをする立場の上司が考慮すべきことで、あなたが心配することではありません。まずは自分の治療に専念してください。
うつ状態などがある場合、毎日徐々によくなっていくというより、調子がいい・調子が悪いを繰り返しながら段々とよくなっていきます。調子がいい日が何日か続いたからといって活動量を増やすのはハイリスクです。特に復職や転職の準備については「この様子ならもう大丈夫だろう」と自己判断せず、主治医に相談して始めるようにしてください。
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医師の指示に従って治療する
うつ病などの精神疾患で休職した場合、医師の指示に従って薬物治療をします。この時、症状が落ち着いてきても自己判断で服薬をやめるのは危険です。服薬によって症状が抑えられているから落ち着いているのであり、服薬をやめると再度症状が悪化する恐れがあります。
また、医師の指示がなく自己判断で服用をやめると、思わしくない症状が出たり、病気の慢性化の原因にもなります
・療養前半にやってはいけないこと
ここでは治療を送らせてしまう行動をいくつか挙げてみました。
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過度な飲酒、喫煙
職場から離れ、何もしない時間が増え、さらにイライラしてくると飲酒や喫煙の量が増えてしまうことがあります。多量のアルコールの摂取は睡眠の質を悪くし、体の回復が遅れる可能性が高いので、療養中の飲酒は適量に留めてください。喫煙も生活習慣業の一因となるため、会社に勤めていた頃より喫煙の量が増えた場合は注意が必要です。気晴らしに外の空気を吸いに散歩に出るなどしてストレスを緩和するようにしてください。
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人生の決断、転職
療養の前半は心の状態が安定せず、過度に悲観的になることもあります。「今は冷静な判断ができない時期だ」という認識を持っておいてください。
まれに思い詰めてしまい、「これ以上会社に迷惑をかけられないから明日辞表を出しに行こう」「こんな自分と一緒では家族に迷惑をかけるから離婚したほうがいい」などという考えが浮かび、本当にそのように行動してしまう人もいます。
転職についても同様です。
療養中は自分で思っている以上に体力・判断力が落ちていることがあります。もし焦って転職し、新しい職場が決まったとしても、自分が思っていたように体も頭も動かず、「こんなはずではなかったのに…」という結果が続き、新たな精神疾患になることも考えられます。
くれぐれも、人生を左右するような大きな決断はまだせず、体と心を休ませることを最優先にしてください。
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療養が長引くことを恐れ、主治医に本当のことを伝えない
「早く復帰したい」「調子が悪いというと怒られそう」「主治医を前にする緊張して上手く話せない」
などの理由から、主治医に本当のことを伝えない(もしくは伝えられない)と、治療が上手く進まないことがあります。
精神不調はレントゲンや機器で測定できるものではなく、本人が話す内容をもとに医師が病状を診断します。ですから患者は、医師に症状をきちんと伝える必要があります。緊張して話がまとまらない時は、日ごろから自分の体調を記録しておいたものを見せるとよいでしょう。
■ 休職後半にしてはいけないこと・することよいこと
不調から来ていた症状が治まり気持ちが前向きになり始めたら、徐々に生活リズムを整えリハビリを始めます。この時期にするとよいこと、してはいけないことを解説しますが、ここでも前提として「医師が指示した治療を続ける」ことが必要です。
・療養後半におすすめの過ごし方
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休職前の生活リズム・体力に戻す
低下した体力の回復のため、まずは散歩等の軽い運動を始めてみましょう。療養前半は日中も横になり、眠っていることが多いかと思います。療養前半は体力の回復を優先すべきなので、「食事の時間がバラバラ」「生活リズムが狂ってしまった」といったこともさほど問題はありません。
しかし、体力が戻りはじめたら、徐々に生活リズムを就業時のリズムに戻すことがリハビリの第一歩です。
散歩にでて、近所の図書館へ行き読書をするなど、少しずつ体と頭を使うことを増やしていきます。特に、午前中から毎日決まった場所(カフェや図書館、少し離れた距離のある公園など)へ出かける習慣も生活リズムを作る上でよいでしょう。
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休職に至った原因を振り返る
これは回復してきたらで構いません。仕事から離れ時間が経つと、休職前の状態が客観的にみられるようになってきます。自分にとって何が一番ストレスだったのか?どうしたらその状況を改善できるか?
業務内容が原因なのか?人間関係が上手くいかなかったのか?
これらをゆっくりで構いません。紙に書き出し、少しずつ整理してみてください。自分の考え方の癖、行動の癖などが見つかり、復職後の再発防止にもつながります。
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自分に適した働き方を考える
上司や人事との面談の結果、復職後に配置転換になるかもしれません。
復職の面談際には「どの業務はできて、どの業務は外れるべきか」「今後も同じ業務をするならどのように対処するか」ということを話すことになります。ですから、上記の様に何が自分にとって負担だったのかを振り返り整理したことがとても役立ちます。
また、復職後には時短勤務など、慣らし出勤などの制度があれば活用して、無理なく仕事に慣れることを優先しましょう。
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リワーク制度(復職支援)を活用してみる
「そもそも、自分にあった仕事が分からない…」「何度も休職を繰り返してしまっている…」「復職準備ができているのか不安になる」といった悩みがあるなら、リワークを活用してみるのがおすすめです。
生活リズムを整えながら復職に向けての心理面・スキル面のリハビリをすると同時に、休職になった時の振り返りをし、再休職防止への取り組みができます。また、仕事のスキルアップにつながるようなプログラムが提供されることもあるので、リワークをつかうことで休職期間がより有意義なものになるでしょう。
リワークについてはこちらの記事を参考にしてください。
リンク→リワークが必要な理由
・療養後半にやってはいけないこと
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長期間の旅行
外出はリハビリの一環ともいえるので、休職期間中に療養で温泉に出かけたり、実家で1か月ほど療養するのは休職の目的の範囲内の行動として考慮されることが多いです。しかし、他の社員に目撃されたとき「さぼっているじゃないか」と反感を買ってしまうことにもなりかねないので、気になる場合は人事担当者や上司に事前に報告を入れるようにしておくと安心です。
しかし、1週間などの旅行となると話は別です。このようなことが見つかった場合は、会社から事情聴取される可能性があります。メンタルヘルス不調で休職する場合、傷病手当金を受け取るケースが多いですが、長期間の旅行に行けるという状態は、就労可能な状態とみなされるので、傷病手当金の不正受給の可能性も出てきます。休職中に長期間の旅行などには行かないようにしてください。
■まとめ
メンタルヘルス不調で休職中にしてはいけないこと・するとよいことをまとめてみました。
療養中はしっかりと心身を休めることが第一優先です。後半になると自分と向き合える心の余裕も出てくるでしょう。忙しく働いているうちは考えられなかった、今後の働き方や生き方についてじっくり考えるチャンスかもしれません。この記事が、休職期間を有意義なものにする役に立てば幸いです。