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公立小学校の教員がメンタル不調にならないために

1.公立小学校教員のメンタル不調の実態

日本の公立小学校の教員は、近年、メンタルヘルスの問題に直面していることが多く報告されています。文部科学省の調査や、各種研究機関によるデータは、教員の心身の負担が深刻化していることを示しています。特に、うつ病や適応障害など、精神的な疾患により休職する教員の数が年々増加している傾向にあります。たとえば、2021年度のデータによれば、教員の病気休職者の約6割が精神疾患によるものであり、その大半が過労やストレスに起因するとされています。

加えて、コロナ禍以降、オンライン授業や消毒作業、感染対策の指導など新たな業務が増えたことも、教員の負担をさらに悪化させる要因となっています。こうした複数の業務が重なり、教員は仕事のやりがいを感じにくくなる一方で、身体的・精神的な疲労が蓄積しやすくなっています。

 

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2.どうしてメンタル不調が多いのか

教員がメンタル不調に陥る理由は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の要因が挙げられます。

 

(1)業務の過多と時間外労働

公立小学校の教員は、授業だけでなく、校務分掌、保護者対応、部活動の指導など多くの業務を担当しています。さらに、これらの業務は放課後や休日にまで及ぶことが多く、長時間労働が日常化しています。勤務時間内に終えられない業務を家庭に持ち帰ることもあり、教員は常に仕事に追われる状態にあります。

 

(2)保護者や地域からの過剰な期待とプレッシャー

近年、教育に対する保護者の期待や要求が高まり、教員はその対応に追われています。「モンスターペアレント」と呼ばれる一部の保護者からの過剰な要求や理不尽なクレームに悩まされることも多く、これが大きなストレスとなっています。また、地域社会や行政からの期待も高く、教員はこれらの期待に応えるために心身ともに負担を感じています。

 

(3) 教育現場の変化と対応

現代の教育現場は、多様な生徒が集まる場所となり、発達障害を持つ生徒や、外国人家庭の子ども、家庭内問題を抱える生徒など、さまざまな背景を持つ子どもたちが増えています。その結果、教員はこれまで以上に個別対応が求められ、教える内容だけでなく、社会福祉や心理学的な知識・技術も必要とされています。しかし、そうしたスキルを十分に習得できる時間やリソースがないため、教員は過重な負担を感じています。

 

(4)人間関係のストレス

学校は、教師同士や管理職との人間関係も重要な要素です。管理職からの圧力や、同僚との意見の対立がストレスの原因となることも多く、特に若手教員や中堅教員は、そのバランスを取ることに悩むことが少なくありません。また、孤立感を感じる教員も多く、職場のサポートが十分でない場合、メンタルヘルスに悪影響を及ぼします。

 

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3.教員自身のメンタルの整え方

教員が自身のメンタルを健全に保つためには、いくつかの対策を講じることが重要です。以下は、教員が日常的に実践できる具体的な方法です。

 

(1)ストレス管理とリラクゼーションの技術を身につける

メンタルヘルスを維持するために、ストレス管理の技術を学ぶことが効果的です。深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を日常的に取り入れることで、心身のリフレッシュが図れます。特に、短い時間でできるリラクゼーションの習慣は、忙しい教員でも続けやすい方法です。

 

(2)タイムマネジメントのスキルを向上させる

教員の仕事は多岐にわたるため、業務の優先順位を適切に設定し、効率的に時間を使うことが求められます。業務をリスト化し、重要度や緊急度に基づいて仕事を整理することで、時間外労働を減らすことができます。また、すべてを完璧にこなす必要はないと割り切り、必要に応じて業務を委任する勇気も必要です。

 

(3)サポートを求めることをためらわない

メンタルの不調を感じた場合、一人で抱え込まず、信頼できる同僚や上司に相談することが大切です。学校内には、スクールカウンセラーや産業医などのサポート体制が整っている場合もあります。こうした専門家の力を借りることで、早期に問題を解決することができる場合があります。また、教員同士での情報共有や支え合いも大切です。

 

(4)プライベートな時間を大切にする

仕事の忙しさに追われている教員にとって、プライベートな時間を持つことは非常に重要です。家族や友人と過ごす時間や趣味に没頭する時間は、心のバランスを保つための重要な要素です。特に、完全に仕事から離れる時間を確保し、リフレッシュすることがメンタルヘルスの維持に大きく寄与します。

 

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4.社会全体で取り組んでいくべき課題

教員のメンタルヘルス問題は、個人の努力だけで解決することは困難です。社会全体で取り組むべき課題として、以下の点が挙げられます。

 

(1)教育現場の働き方改革

教員の働き方改革は、長時間労働や業務過多といった深刻な問題を改善するため、文部科学省が主導して進めているものです。しかし、その進展は地域や学校によって差があり、必ずしも十分に進んでいるとは言えない状況です。いくつかの改革は進展を見せている一方で、教員一人ひとりの業務負担を本質的に軽減するためには、さらなる取り組みが求められています。

 

①教員の時間外労働の削減

文部科学省は2019年に「教職員の働き方改革」を推進するためにガイドラインを発表し、時間外労働の削減を目指す取り組みが進められています。この中には、勤務時間の上限を設定する「勤務時間の管理・上限ガイドライン」が示され、部活動指導や放課後対応を含む教員の労働時間を明確に管理することが奨励されています。具体的には、週あたり45時間、年間360時間を上限とする労働時間の枠組みが設けられました。

これに基づき、各自治体や学校ではタイムカードや勤務時間管理システムの導入が進められているものの、実際には業務量の削減が進んでいない現場も多く、教員が業務を持ち帰ることが常態化している学校も依然として存在します。部活動の指導などに関しても、外部委託や地域のボランティアへの委任が進んでいる地域もありますが、教員が引き続き責任を持って対応しているケースも多いです。

 

②ICTの活用による効率化

働き方改革の一環として、ICT(情報通信技術)の活用も推進されています。特に、授業準備や成績管理、保護者対応など、従来は手作業で行われていた業務がデジタル化されることで、教員の業務負担が軽減されることが期待されています。例えば、電子黒板やオンライン授業システムの導入によって授業の効率化が図られている学校も増えてきています。

しかし、ICTの導入には地域や学校間で格差があり、全ての学校で十分に活用されているとは言えない状況です。特に地方の学校では予算やインフラの問題から、ICTの導入が遅れている場合もあり、またICTに不慣れな教員に対する研修やサポートも不足しているため、これが業務の効率化に直結していない現状もあります。

③部活動指導の外部委託

文部科学省は、部活動の指導を教員以外の人材に委託する「部活動指導員」制度を導入しています。特に、休日や放課後に行われる部活動に関しては、専門の指導者や地域のボランティアが対応することで、教員の負担を軽減する取り組みが進められています。

この制度は特に中学校を中心に導入が進められており、一部の学校では部活動の完全な外部委託が実現しています。これにより、教員が休日や放課後の時間を業務から解放され、プライベートな時間を確保できるようになっているケースも増えています。しかし、すべての学校で外部委託が進んでいるわけではなく、地方の学校では外部指導者が確保できないなどの問題も残っています。

 

④教員増員の課題

教員一人あたりの負担を軽減するために、教員の増員も求められていますが、財政的な制約から進展は限定的です。特に大都市圏の学校では、クラス規模の拡大や少人数学級を実現するための教員不足が課題となっており、一人の教員が複数の役割を担うことで、依然として業務量が過大となっています。

 

⑤働き方改革の進捗状況の総括

教員の働き方改革は、政策レベルで進められているものの、現場での進展はまだ不十分です。特に、時間外労働の削減や業務効率化を実現するためには、ICTの普及や部活動指導の外部委託などの施策が重要ですが、地域や学校によってその進展には大きな差があります。

 

(2) メンタルヘルスケアの充実

公立学校の教員が抱えるメンタルヘルス問題に対して、さまざまな取り組みが進められています。しかし、その実施にはいくつかの難しさが伴い、解決策を模索する必要があります。

 

①メンタルヘルスケアにおける具体的な取り組み

  • スクールカウンセラーの配置

多くの学校では、スクールカウンセラーが配置されており、教員や生徒のメンタルヘルスケアを担当しています。スクールカウンセラーは、ストレスや精神的な不調に悩む教員が相談できる窓口として重要な役割を果たしています。カウンセリングを通じて、教員のストレス要因を探り、解決策やサポートを提供することが期待されています。

  • 産業医やメンタルヘルス専門家によるサポート

一部の学校では、教員の健康管理の一環として、産業医が定期的に教員と面談を行い、メンタルヘルスケアをサポートしています。産業医は、教員が抱える過度なストレスや不調に対処し、必要に応じて休職や治療のアドバイスを行います。また、メンタルヘルスの専門家を招いた研修やワークショップも開催され、セルフケアの方法を学ぶ機会が増えています。

  • メンタルヘルス研修と教育

教員自身がメンタルヘルスについての知識を深め、自己管理能力を高めるための研修も実施されています。メンタルヘルスのサインに早期に気付き、適切な対処法を学ぶことが重視されています。例えば、マインドフルネスやリラクゼーション法、ストレス管理の方法を学ぶ研修が増え、教員が日常的に実践できるセルフケア技術の習得が推奨されています。

 

②メンタルヘルスケアにおける難しさ

  • 相談のための時間と環境の確保が難しい

教員の多忙なスケジュールの中で、メンタルヘルスケアに時間を割くことは困難です。授業や部活動、校務分掌に加え、保護者対応など多くの業務を抱える教員にとって、カウンセリングや産業医との面談に参加する時間を確保することが難しい現状があります。また、一部の教員は「忙しい中で相談する時間を取ること自体が負担」と感じる場合もあり、結果としてケアの機会を逃してしまうことがあります。

  • メンタルヘルスに対する偏見や恥の意識

メンタルヘルス問題に対して、まだ一部の教員や職場には偏見が残っている場合があります。「メンタルの不調を訴えることは弱さの証」と感じたり、「同僚に知られることを恐れる」といった感情が、相談をためらわせる要因となっています。また、上司や同僚からの評価を気にして、メンタルヘルスケアを受けること自体がネガティブに捉えられることもあります。

  • カウンセラーや専門家の数の不足

全ての学校に十分なカウンセリングリソースがあるわけではなく、スクールカウンセラーやメンタルヘルス専門家の数が不足している地域もあります。特に地方の学校では、カウンセリングの頻度が限られたり、定期的なサポートが得られにくい状況が見られます。また、カウンセラーが配置されていても、信頼関係を築く時間が十分に確保されない場合、教員が十分に心を開いて相談できないこともあります。

 

③メンタルヘルスケアにおける解決策

  • 相談のハードルを下げる柔軟なアプローチ

忙しい教員でも利用しやすいメンタルヘルスケアの提供が求められます。例えば、オンラインカウンセリングや、業務後の時間帯に利用できるフレキシブルな相談制度を導入することで、教員が時間の制約を感じずに相談できる環境を整えることができます。また、校内での相談以外に、外部のカウンセリングサービスを活用することも有効です。

  • メンタルヘルスに関する意識の啓発

教員や管理職に対して、メンタルヘルスの重要性を認識させるための啓発活動が重要です。メンタル不調を感じた際に、早めに相談することがいかに有効であるかを伝えることで、相談のハードルを下げ、ケアを早期に行う文化を根付かせることができます。また、職場全体で「メンタルヘルスをケアすることは弱さではなく、仕事の質を高めるために必要なこと」という共通認識を醸成することが重要です。

  • スクールカウンセラーや専門家の拡充

カウンセラーやメンタルヘルス専門家の数を増やし、全ての教員が必要なときにアクセスできるようにするための制度改革が必要です。特に、地方の学校でも質の高いケアが受けられるよう、政府や自治体が積極的にカウンセラーの配置を推進し、教育現場のメンタルヘルスケア体制を強化する必要があります。また、教員のメンタルヘルスケアを行う専門家に対して、継続的なトレーニングを行い、最新のケア方法を提供できるようにすることも重要です。

  • セルフケアの習慣化

日常的に教員がストレスケアやリラクゼーションの方法を実践できる環境を整えることも大切です。たとえば、学校内にリラクゼーションルームを設ける、定期的にリフレッシュのための研修を行うなど、教員が手軽にリフレッシュできる取り組みを増やすことが考えられます。また、学校全体でストレスマネジメントを共有するプログラムを導入し、セルフケアが自然にできる環境を作ることも効果的です。

④メンタルヘルスケアの充実に向けて

メンタルヘルスケアは、教員が健康で持続可能な働き方を続けるために不可欠な要素です。相談のハードルを下げるための柔軟なケア体制の整備や、メンタルヘルスに対する偏見を解消する啓発活動が必要です。専門家の増員とケアの質向上により、教員が心身の健康を保ち、より良い教育環境で働くことができるよう、社会全体で支えていく取り組みが求められます。

 

(3)保護者・地域社会の理解と協力

公立小学校の教員が抱える業務やメンタルヘルスの課題を解決するには、保護者や地域社会の理解と協力が不可欠です。しかし、保護者や地域社会との連携にはいくつかの難しさがあり、その改善には効果的な対策が必要です。

①保護者・地域社会との連携における難しさ

  • 保護者の要求と期待が過剰になりがち

教員に対して、保護者からの要求や期待が過剰になることがあります。特に、成績向上や生活指導、子どもの問題行動への対応について、保護者が教員に一方的に負担をかけるケースがあります。このような期待の押し付けは、教員の精神的負担を増大させ、過剰な労働時間やストレスの原因となります。また、子ども一人一人の状況に応じた対応を求める声が強くなる一方で、現実的には教員が全てに応じることが難しい場合もあり、保護者との摩擦が生じることがあります。

  • 教育に対する理解の不足

一部の保護者や地域住民は、学校や教員が行っている教育活動の全体像やその重要性を十分に理解していないことがあります。例えば、授業や学級運営だけでなく、学校行事、部活動、生活指導、校務分掌といった幅広い業務を教員が抱えていることが見過ごされがちです。こうした教育活動の負担を認識していないと、教員に対する不当な要求や期待が高まり、相互理解の不足が生じやすくなります。

  • 保護者とのコミュニケーションの負担

保護者とのコミュニケーションは非常に重要ですが、メールや電話、面談を通じた対応が日常業務に大きな負担をかけることがあります。特に、一部の保護者が頻繁に質問や要望を伝えてくる場合、教員がその対応に追われることで、本来の教育活動に集中できない状況が生まれます。また、コミュニケーションの際に、保護者の期待と現実の教育現場との間にギャップがある場合、それが教員のストレスを増幅させることもあります。

  • 地域社会との連携不足

学校と地域社会との協力が不十分な場合もあります。例えば、地域のボランティアや外部指導者が不足しているため、部活動や学校行事において教員が全ての負担を背負うケースが見られます。また、地域社会が学校に対して無関心な場合、学校の活動や教育方針に対する支援が得られず、教員が孤立することもあります。

 

②保護者・地域社会の理解と協力を促進するための対策

  • 保護者への情報提供と教育

保護者が学校や教員の実際の業務内容を理解するためには、定期的な情報提供が重要です。例えば、学校の役割や教員の負担を分かりやすく説明するための保護者説明会や、学校の広報誌、ウェブサイトを通じたコミュニケーションを充実させることが有効です。また、保護者向けのワークショップやセミナーを開催し、教育の現状や教員の働き方についての理解を深める機会を設けることも効果的です。特に、保護者が抱える教育に対する期待や不安を適切に整理し、現実的なサポートの仕方を提案することで、教員への過剰な負担を減らすことができます。保護者自身も子どもたちの教育に積極的に関わり、学校と連携することで、双方にとってより良い教育環境を築くことが可能です。

  • 保護者とのコミュニケーションの負担軽減

保護者とのコミュニケーションの負担を軽減するためには、学校全体で効率的な対応方法を整える必要があります。例えば、保護者からの連絡に対して統一したガイドラインを設け、メールや電話の対応時間を制限することで、教員が必要以上に負担を感じずに対応できる体制を作ることができます。また、保護者との連絡が多い場合には、学年ごとやクラスごとに代表者を選び、情報をまとめて伝える仕組みを導入することも効果的です。また、保護者とのコミュニケーションの一環として、デジタルプラットフォームを活用することも有効です。オンラインでの連絡や情報共有を行うことで、効率的かつタイムリーなやり取りが可能になります。

  • 地域社会との連携強化

地域社会との連携を深めるためには、学校側から積極的に地域住民やボランティアとの交流を図る取り組みが必要です。例えば、地域のイベントや学校行事に地域の人々を招待し、学校がどのような教育活動を行っているかを知ってもらう機会を増やすことが考えられます。また、地域の企業や団体と連携し、学校活動への支援を募ることも効果的です。特に、部活動や放課後活動における地域ボランティアの役割を強化することで、教員の負担を軽減できます。地域全体で子どもたちの教育を支える体制を作るために、地域コミュニティとの定期的な対話の場を設けることが重要です。例えば、学校運営協議会(コミュニティ・スクール)の設置や、地域の意見を取り入れた教育プランの作成を通じて、地域社会との信頼関係を築くことができます。

  • 学校と保護者・地域社会の相互理解の促進

保護者や地域社会が学校に対して理解を深めるだけでなく、学校側も保護者や地域社会のニーズや期待を尊重することが重要です。相互理解を深めるために、学校と保護者・地域住民が共に話し合う場を設けることが有効です。例えば、定期的な「教育懇談会」や「オープンスクール」を開催し、教育に関する意見交換を行うことで、お互いの立場を理解し合う機会を提供できます。

 

③保護者・地域社会の協力を得るための結論

保護者や地域社会の協力は、教員の負担軽減と教育の質向上にとって不可欠です。過剰な期待やコミュニケーション負担といった難題に対処するためには、学校側から積極的な情報発信とコミュニケーションの効率化が必要です。また、地域社会との連携を深め、学校全体で子どもたちを支える環境を作ることが重要です。

 

(4)教育政策の見直し

政府や地方自治体も、教育現場の実情を反映した政策を打ち出す必要があります。教員の配置人数の増加や、業務分担の改善を進めることで、教員一人ひとりの負担を軽減できるようにすることが求められます。また、教育に対する過剰な期待や、成果主義的な評価制度を見直し、教員が子どもたちに寄り添う教育を行える環境を整えることが重要です。

 

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5.教員がメンタル不調にならない好事例

メンタル不調に対処するための効果的な取り組みを行い、教員の健康を守る好事例がいくつか見られます。ここでは、具体的な学校や地域での成功事例を挙げ、それらが教員のメンタルヘルスにどのように貢献しているのかを紹介します。

 

(1)業務負担を分担するチームティーチングの導入

ある学校では、複数の教員が1つのクラスを共同で担当するチームティーチングが成功を収めています。この方法では、教員一人が全ての科目や業務を抱えるのではなく、得意分野や科目を教員間で分担することで、業務量を削減し、負担が軽減されます。また、チームでの協力により、授業準備や教材開発も共同で行うため、一人にかかる負担が減少します。

 

効果: このような分担体制により、教員は孤立感を感じにくく、互いにサポートし合うことでストレスを軽減できます。また、他の教員との連携を通じて、問題が発生した場合にも相談しやすくなるため、早期に解決策を見つけやすくなります。

 

(2)メンタルヘルスケア専門プログラムの導入

ある自治体では、全ての教員に向けた定期的なメンタルヘルス研修を義務化しています。この研修では、ストレス管理やリラクゼーション法、セルフケアの技術を学ぶだけでなく、教員間での交流を深め、職場内で支援ネットワークを構築することを目指しています。また、メンタルヘルスチェックを年に数回実施し、早期に不調の兆候をキャッチして適切な対応を促進しています。

 

効果: 教員が自己ケアの重要性を学び、日常的にメンタルケアを実践するようになった結果、メンタル不調の発症率が低下しました。研修を通じて、個々の教員が自分自身のストレス状態に気づき、早期に対策を取ることができるようになったことが功を奏しています。

 

(3)校内の風通しを良くするためのコミュニケーション強化

ある学校では、管理職と教員の間の定期的な対話を設け、業務負担やストレスの問題を迅速に共有・解決する取り組みが行われています。例えば、毎月のミーティングでは、教員が抱える悩みや問題点をオープンに話し合い、対策を一緒に考える場を提供しています。また、校内に「ストレス軽減サポートチーム」を編成し、教員が気軽に相談できる体制を整えました。

 

効果: 教員同士や管理職とのコミュニケーションが円滑になることで、問題が長期化する前に解決され、ストレスが蓄積しにくい環境が作られました。これにより、教員が感じる業務のプレッシャーが軽減され、職場全体の雰囲気が改善されました。

 

(4)外部リソースとの連携によるサポート体制強化

ある地域の学校では、外部のメンタルヘルス専門家やコンサルタントと連携し、教員が日常的に利用できる相談窓口を設置しています。この窓口は、オンラインや電話でのカウンセリングを提供しており、教員が気軽に相談できる体制を整えています。また、産業医や外部コンサルタントが定期的に学校を訪問し、メンタルヘルスに関する研修や個別相談を行っています。

 

効果: 外部リソースの活用により、教員が職場内でのプレッシャーを感じずに、第三者に相談できる環境が整いました。これにより、職場の人間関係の中で相談しづらい問題にも対応でき、早期に解決策が得られるため、メンタルヘルスの悪化を防ぐことができました。

 

(5)柔軟な働き方の導入

ある教育委員会では、教員が過度な残業をしないよう、フレックスタイム制度や在宅勤務の導入を進めています。特に、授業準備や教材作成といった作業は自宅で行うことが許可されており、通勤のストレスや長時間勤務を避けることができるようになっています。また、時間外勤務の制限を徹底し、教員が適切な時間に仕事を終えられるように調整が行われています。

 

効果: フレックスタイム制度の導入により、教員は仕事と生活のバランスを取りやすくなりました。自宅での作業を許可されることで、よりリラックスした環境で業務を行えるようになり、結果としてメンタルヘルスの向上に繋がっています。

 

(6) 学校運営における外部支援の積極的な活用

一部の学校では、部活動や課外活動の指導を外部の専門家やボランティアに委託することで、教員の業務負担を軽減しています。これにより、教員は授業準備や生徒指導に集中できるようになり、精神的・肉体的な負担が大幅に減少しました。

 

効果: 外部の専門家に頼ることで、教員が自分の得意分野に専念できる環境が整いました。また、部活動の負担が軽減されたことで、教員の勤務時間が短縮され、ワークライフバランスが改善しました。

 

(7)結論

これらの好事例から分かるように、メンタル不調を防ぐためには、業務負担の軽減やメンタルケアのサポート体制の整備が不可欠です。教員一人一人が自分の健康に配慮し、学校全体や地域社会が協力して働きやすい環境を作ることで、教員のメンタル不調を予防し、質の高い教育を提供することが可能となります。

 

ひらめき

6.まとめ

公立小学校の教員は、多くの業務と責任を抱え、メンタルヘルスに大きな負担を感じています。その原因は、過剰な労働、保護者や社会からの期待、教育現場の変化に対応するためのプレッシャーなど、多岐にわたります。しかし、教員自身がメンタルヘルスを保つためにできることや、社会全体で取り組むべき課題も存在します。教員が健全な心身を保ち、子どもたちに質の高い教育を提供できるよう、働き方改革やメンタルヘルスケアの充実、保護者や地域社会との協力が必要です。

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