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アンガーマネジメントって何?企業がアンガーマネジメントを取り入れるべき5つの理由

“アンガーマネジメント”という言葉を耳にしたことはありますか?

angerは英語で「怒りの感情」、managementは「管理する」という意味で、日々私たちが感じる「怒り」の感情に関する対処法です。アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで提唱されました。現在は教育分野をはじめ、ビジネス、医療・福祉分野、スポーツの中で取り入れられています。

今アンガーマネジメントが注目されている背景には、価値観の多様化・情報化社会があります。

私たちの住む社会は、生き方や趣味嗜好が多様化しています。近年では特にSNS等のインターネットの発達により価値観がぶつかり合いやすく、“怒り”を感じやすい環境だとも言えます。

アンガーマネジメントの技術を学ぶと自分自身の気持ちに気づき、整理する習慣が身に付きます。そして他者の気持ちも理解できるようになり、日常や職場で良好な人間関係を築くのに役立つと言われています。今回はアンガーマネジメントの効果と、学ぶことでどんなメリットがあるのかを解説していきます。

 

[目次]

■アンガーマネジメントとは?

■ アンガーマネジメントの具体的な取り入れ方は?

■職場にアンガーマネジメントの手法を取り入れるべき5つの理由

■アンガーマネジメントとは?

アンガーマネジメントは、“怒り”という感情を上手にコントロールする心理トレーニングです。怒りという感情を否定するものでも、抑えつけることでもありません。うまく怒りと付き合い、怒りの感情から起こるさまざまな後悔を減らすための手法がアンガーマネジメントなのです。

 

たとえば部下や子供に対して「なんであんなに怒ってしまったのだろう」と後悔することは誰にでもあります。また逆に、理不尽な状況をただ受け入れてしまい「あの時、もっと怒っていればよかった!」と後から許せない怒りとして残してしまうこともあります。

 

“怒り”という感情はどちらかというと否定的なものとして捉えられ、これまでは正面からどう扱うかを学ぶことはなかったと思います。しかし、上司や同僚との付き合い、取引先との人間関係がストレスの原因となり、適切に怒りを扱わないと仕事の能率や生産性に影響を与えることから、現在は多くの企業が研修に取り入れるようになりました。

 

 

■企業でアンガーマネジメントが取り入れられ始めた背景とは?

アンガーマネジメントが日本の企業で注目を集め始めた背景には、働き方改革という政府のスローガンのもと、企業がパワハラ・セクハラの防止に力を入れだしたことがあります。

 

厚生労働省による調査で明らかになったのは、都道府県労働局の「職場のいじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は年々増加しているという事実でした。「平成 28(2016)年度職場のパワー ハラスメントに関する実態調査」では、パワハラの相談件数が最も多く、過去3年以内に約3割の企業でパワハラの相談があったと公表されています。これらを踏まえ、現在社会全体がパワハラ・モラハラを減らしていこうという動きの中にあるのです。

 

一方、テレビでも毎年取り上げられる「理想の上司ランキング」は、芸能人が候補にあがりますが、上位に選ばれる方の理由として「親しみやすい」「頼りがいがある」などが並べられています。なかには、「叱るときは叱ってくれそう」という性格を理想の上司の条件としてあげている方もいるようです。

 

怒りの感情に囚われ、気にくわないというだけで部下を罵倒したり、相手への注意と共に暴言を吐いたりすることはない、もちろん立場を利用して理不尽に人を攻撃することはない。しかし、怒りの感情に振り回されず、叱るべき時にはきちんと叱り、教えるべきときにはきちんと教える。そんな上司の態度が望まれているようです。

アンガーマネジメントでは、適切な叱り方も身につくため、理想的な上司の形成には、有効だと言えるでしょう。

■ アンガーマネジメントの具体的な取り入れ方

 

アンガーマネジメントは次の3つのポイントにまとめられます。

 

  • 自分自身の「怒り」のタイプを認識し、何に怒りを感じやすいのかを把握する

  • 怒りを感じても外に出さない方法を学ぶ

  • 怒りをぶつけることなく冷静にコミュニケーションを取る方法を学ぶ

 

 

1.自分自身の「怒り」のタイプを認識し、何に怒りを感じやすいのかを把握する方法

アンガーマネジメントは、まず自分の「怒り」のタイプを認識することから始まります。

例えば、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会のHP(https://www.angermanagement.co.jp/)では、自分が6つの怒りのタイプのどれに当てはまるかを無料診断できます。

 

  • 職場で怒りを感じても外に出さない方法の例

職場で怒りを感じても外に出さないようにするために、すぐにできる5つのアンガーマネジメント実践方法を紹介します。

 

(1)6秒間数える

人間の怒りのピークは長くても6秒である、ということが分かっています。ですから、職場で怒りが爆発しそうなときは、まず6秒間数えることから挑戦してみましょう

 

(2)その場からから離れる

その場にいると怒りがどんどん湧いてきそうな場合は、自ら離れましょう。トイレに行ったり、飲み物を買いに行ったりしてその場から離れることが効果的です。

 

(3)未来をイメージする

その場で怒りを露わにすることは職場の空気を悪化させ、自分の評価を下げかねません。落ち着いて、「この怒りをぶつけたらどうなるか、怒りを収めることでどうなるか」という未来を思い浮かべます。

 

(4)嬉しいことを思い出す

嬉しかったことを思い出すことで、怒りの感情はリセットしやすいと言われています。自分の子供の笑った顔や、仕事で本当に嬉しく感じた業績、自分だけの趣味…それらを思い浮かべます。また、無理にでも口角をあげ、笑みを意図的に作ることで怒りが静まると言われているのでセットでやりましょう。

 

(5)こっそり自分の中でつぶやくフレーズを作る

怒りがわいたときに自分の中で呟く合言葉を決めておくのもよい方法です。なんでもいいのですが、「ワイキキ」「ラッキー」など楽観的に聞こえる単語や、アニメのキャラクターのセリフなどもいいでしょう。

 

  • 怒りをぶつけることなく冷静にコミュニケーションを取るやり方

怒りという感情は、主観的に「こうあるべき(・・)ことがそうなっていない」と感じた時に生まれる感情です。部下が失敗したことに憤りを感じるという時にはまず、「部下が失敗したことは、部下の問題だ」「この怒りは自分の問題だ」と、まず自分と相手の問題を分けて考える必要があります。そして、相手への感情は入れず、失敗を繰り返さないための改善点を伝えます。

 

なぜ怒りたくなったのかを相手に伝える際は、その原因を適切に伝えます。アンガーマネジメントは、怒りを悪だとは考えません。ただ、怒りの感情のまま動いてしまうと、相手も反発して、怒りの原因が上手に伝わりにくくなってしまうのです。

この時、「私を主語にする」ことがポイントです。「私はこう感じた」と、私を主語に使うことで、無意識に相手に怒りの矛先が向くことが避けられます。

 

■職場にアンガーマネジメントの手法を取り入れるべき5つの理由

具体的に職場で怒りをコントロールする方法を解説してきました。ここからはアンガーマネジメントを職場に取り入れるべき5つの理由を解説します。

 

①ストレスが軽減する

怒りを相手にぶつけてもスッキリするのは一瞬です。後々、自分の行動に対して後悔や恥の感情という、強いストレスを感じることになります。ですからアンガーマネジメントを学び、自分の怒りをコントロールすることで中・長期的なストレス減につながります。

また、「怒りたいのに怒れない」自己表現が不得意なタイプの人も、怒っていることを相手に上手に伝えることができるので、人間関係のストレスが軽減すると言われています。

 

②仕事に集中できる

「腹が立ちやるべきことに集中できなかった」「腹立たしい記憶が頭から離れず、一日中イライラした」などという経験はないでしょうか。怒りの感情をコントロールすれば仕事に集中できます。

また、仕事でのイライラを家庭に持ち帰り家の空気も悪くする…というようなことも減り、仕事もプライベートも円滑に周りやすくなります。

③コミュニケーションが円滑になり生産性が上がる

人と関わる際の抵抗が減れば、思いやりのあるコミュニケーションができるようになります。
感情の起伏が激しく怒りっぽい人とはコミュニケーションが取りづらいものですよね。アンガーマネジメントは円滑な職場のコミュニケーションにも役立ちます。

 

「怒られるかもしれないから先輩に質問せずに、自分で解決しようとする」「怒られるのを恐れて、上司への悪い報告を怠る」といった類の報・連・相の遅れは、積み重なると職場の生産性を大きく低下させます。
職場にアンガーマネジメントを取り入れると人間関係が良好になり、気軽にいろいろなやり取りができるようになります。その結果、職場全体の生産性の向上にもつながります。

 

④メンタルヘルス不調による休職者が減る

「上司から感情的に叱責されすぎ出社できなくなった」「上手に怒ることができず、怒りの気持ちを抱え込んでしまい夜が眠れなくなった」「パワハラからうつ病を発症し休職をしている」などといった事例が後を絶ちません。

 

厚労省の調査によると、労働者の大半が仕事場にストレスを感じており、心の健康状態を失って休職する社員は年々増加しています。うつ病や双極性障害などの精神疾患を引き起こすと、回復まで仕事を休む必要があり、その間の人員を補充するため余分な人材コストが必要となります。

 

休職者1名当たりの年間追加コストは422万円※ともいわれていますから、メンタルヘルス不調による休職・離職は本人にとっても辛いことですが、会社にとっても大きな損失です。職場の研修にアンガーマネジメントを取り入れることで、これらの事例を減らすことができます。

 

※30代後半、年収約600万円、男性が6ヶ月間休職する場合(内閣府データより)

 

⑤離職率が下がる

離職理由の多くは職場の人間関係にあります。時には離職の原因が上司からのパワハラにあたるということも少なくありません。NHKまとめによる「日本人の意識調査(2018年)」では、現代の若者の多くが職場に求めているのは高い収入ではなく「仲間と楽しく働ける」ことだとされています。

 

社会の倫理観は常に変動しています。中堅社員がかつて新入社員の頃に受けた教育を今行うと、すぐに会社を辞めてしまうという…という声は多いです。せっかく入社した新入社員が人間関係やパワハラなどが原因で退職することは、人事採用人件費の流出ですから企業にとって大きな損失です。アンガーマネジメントで適正なコミュニケーションを学べば、離職率の低下にもつながります。

■まとめ

アンガーマネジメントは、“怒り”を上手にコントロールする心理トレーニングです。怒りという感情を否定するものでも、抑えつけることでもありません。自分の怒りのタイプを認識し、怒りを外に出さず、冷静にコミュニケーションをとるための手法です。

マネジメント層の研修にアンガーマネジメントを取り入れていくことで、組織のパワーハラスメント防止にも役立ちます。

そして職場で活用することで職場のコミュニケーションが円滑になり職場の生産性が上がります。人間関係のストレスが軽減し、安心して長く働くことができます。休職者や離職者が減れば、採用に新たなコストをかけることも減りますから、アンガーマネジメントは企業・社員双方にとっても大きなメリットとなるのです。

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