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SST(ソーシャルスキルとレーニング)のもたらす効果とは?

“ソーシャルスキル”とは、対人関係や集団行動といった社会活動に必要なスキルのことです。このスキルが低いと、人と関わることが苦痛に感じ、社会生活が困難になります。

このような対人スキルは本来、家族や周囲の人と関わりながら身につけていくものでした。しかし、様々な理由から対人スキルが育たないまま大人になり、社会活動に困難さを感じている人は少なくありません。

このような時代の中で求められているのが「ソーシャルトレーニング(以下 SST)」です。SSTは「社会生活技能訓練」「生活技能訓練」とも呼ばれています。特に職場での人間関係で悩まれている方、そして精神疾患から休職に至り、ご自身の行動を変えていきたいと思っている方はぜひ参考にしてください。

[目次]

■なぜ、今ソーシャルスキルトレーニングなのか?

■SSTはどうやって行うの?日常に取り入れる方法も解説

■SSTを受けられる場所

■SSTはどうやって行うの?日常に取り入れる方法も解説

SSTの訓練はどのような内容なのでしょうか。ここでは一例を紹介していきます。

 

〈ロールプレイ〉

SSTの代表的な訓練に「ロールプレイ(役割演技)」が挙げられます。

その人の課題である・課題となりそうな「ある場面」に対し、どのように振舞うのがベターなのかを考え、お題となるシチュエーションを参加者同士や担当指導者が演技します。演じた後は、「相手への気遣いができていましたね」「こういった言い方もよいですね」などといったフィードバックが得られます。

 

〈ゲーム、レクリエーション〉

ゲームは「ルールを守る」「もしも負けても受け入れる」「仲間と相談・協力する」といった社会性が楽しく身に付きます。

 

〈ディスカッション、ディベート〉

言葉のキャッチボールをするトレーニングです。相手の意見に耳を傾けつつも自分の意見を伝える練習をしていきます。

 

〈共同行動〉

工作、調理などの「何かを作って遊ぶ」「何かを作って食べる」といった共同作業の過程で、相談する、役割分担する、助け合うといった、社会生活に必要なスキルを学びます。

 

〈ワークシート、絵カード、ソーシャルストーリー〉

ソーシャル・ストーリー™はキャロル・グレイ氏によって開発されました。絵と、その絵が表す出来事が短い文章として書かれたテキストで、その文章を読むことで、その場面での振る舞いを学べます。

ワークシート、絵カード、ソーシャル・ストーリー™は、認識が難しい「空気を読むべきシチュエーション」や「自分や他人の気持ち」を分解して、どういったルールや感情が働いているか理解する助けになります。

 

このように、SSTは楽しめるような要素を入れながら社会性を培っていくことができます。

 

次は具体的なSSTの例について、日常生活と対人関係とに分けて解説します。

 

■日常で取り入れられるSST

SSTは必ずしも専門家による指導者のもと行われるだけではありません。日ごろから意識して取り入れることができますので参考にしてみてください。

 

①挨拶をする

挨拶は、他者とのコミュニケーションには欠かせないものです。しかし、「気恥ずかしい」「タイミングやどのように声かけをすべきか分からない」などの理由から挨拶できない方がいます。適切なタイミングで爽やかな言葉を発することができるようになるために、日常で意識して挨拶をしてみましょう。

 

②相手の気持ちを察する

「相手はどう感じているのだろう」と想像する訓練も日常的に行える訓練です。コミュニケーションを取るのが苦手な人も、次第に相手の気持ちを理解できるようになっていきます。

 

たとえば「仕事で質問をしたら嫌な顔をされた」という場合、どのように考えますか? 「急ぎの仕事で忙しい時に声をかけてしまったのかもしれない」「自分が焦って早口になってしまったのかもしれない」など違った視点で考えることもできます。「職場の人が冷たい」「自分は嫌われている」と考えてしまう人は、考え方の癖を見直してみることも大切ですよ。

 

③会話をする

相手の気持ちを想像し、適切な話題で、言葉を選ぶというスキルが必要な「会話」は、実は複雑なソーシャルスキルです。発達障害を抱える人・感情のコントロールが難しい人は、無自覚に相手を傷つける言葉を使ってしまったり、自分しか興味のない話を長々と続けてしまうことがあります。

 

多くの要素を含む「会話」ですから、実際のトレーニングも様々です。はじめは「特定のシチュエーションを選んで会話をする練習」「テーマ・時間を決めて話し、互いにどう思ったかを振り返る」などから始めてみましょう。

コミュニケーションに関する本を読むよりも、下手であっても実践をすることが上達を早くします。フィードバックをもらうことがポイントなので、気の置けない友人や家族にどう感じたかを聞いてみるとよいでしょう。

■SSTを受けられる場所

ここでは大人がSSTを受けられる場所・機関を紹介していきます。SSTの料金は、運営するのが民間か公的な機関かによって料金が大きく異なります。若者地域サポートステーションや地域活動支援センター、就労・生活支援センターなどで実施される場合は、障害のある人を支援することが目的のため無料で受講できることもあります。

一方で、民間の医療機関や教育事業者などで行われる場合には、トレーニングの内容によっても違いますが1回当たり5,000~10,000円といったケースが多いようです。値段も様々なので、希望する場合は各機関に問い合わせてみましょう。

 

・精神科・心療内科

もっとも身近にSSTを受けられる場所はクリニック・病院です。SSTを学んだ精神科看護師や作業療法士・臨床心理士などが実施します。精神疾患をお持ちでSSTに興味がある方は、まずはかかりつけ医にSSTを実施していないか確認してみてください。大人の発達障害(ADHDなど)、統合失調症などの精神疾患のある方に対しては、治療的観点からSSTが用いられることがあります。

 

・リワークプログラムのSST

リワーク、つまり「復職」のためのSSTです。

リワークとは、return to workの略語です。精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。(引用:一般社団法人日本うつ病リワーク協会)

 

仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、認知行動療法、SST、アサーションなどさまざまなプログラムが一人一人の状態にあわせて行われます。休職になった時の働き方や考え方を振り返り、自分の気質やコミュニケーションの傾向を認識しトレーニングで改善することで、適切な職場復帰と症状の再発を防止することが狙いです。

 

民間のリワーク施設で障害福祉サービスとしてリワーク支援を行っている場合は、自己負担額は1日800円~2,000円で事業所によって異なります。ただし、ご自身の世帯収入に応じて月額上限が決められており、目安として、生活保護世帯や300万円以下の場合は0円、300万円~600万円の場合は9,300円、600万円超の場合は37,200円となっています。公的施設の場合は、費用はかかりません。

 

・一般企業における定着支援のためのSST

一部の障害者雇用をおこなう企業では、独自に定着支援サポートを行っている場合もあります。また、ジョブコーチを導入している企業ではジョブコーチがSSTを実施することもあります。

 

・就職、転職準備のためのSST

SSTは就労移行支援事業所、若者サポートステーション(通称:サポステ)、障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ、就ぽつ)、就労継続支援A型・B型事業所などでも行われます。

これらの期間は就職に困難さを抱える精神障害・発達障害をもつ方も利用できます。「人間関係の構築に失敗して転職を繰り返している」という人は、活用してみてください。

■まとめ

ソーシャルスキルトレーニング=SSTは、「社会生活技能訓練」や「生活技能訓練」などとも呼ばれ、簡単に言うと「社会と関わりながら生きる上での困りごと」の解決に役立つ訓練です。グループ・個別の訓練を通じて対人コミュニケーション能力だけでなく、生活スキル(お金の管理、体調管理、家事)なども楽しみながらトレーニングしていきます。

SSTは発達障害の子供の療育だけではなく、精神障害がある大人向けの支援の現場(リワークプログラム、障害者就労の定着支援、就労移行支援など)でも幅広く活用されています。

特に、精神疾患が原因で休職中の方にリハビリを行う「リワーク」では、自分の気質やコミュニケーションの傾向を認識しトレーニングで改善することで、適切な職場復帰と症状の再発を防止する訓練を受けることができます。長い休職期間を一人で過ごすのは心細いもの。こういった専門の支援機関では相談員がサポートしてくれますから、気軽に問い合わせてみてください。

 

 

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