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その働きにくさは学習障害が原因かも?自分に向いている仕事を見つけたいと悩んでいるあなたへ

「資料の文字を読むのに時間がとてもかかる」「数字は読めるが、会計の暗算ができない」といった仕事の困りごとを抱えている人は、もしかしたら学習障害をお持ちかもしれません。

学習障害は発達障害の一種で、障害の現れ方は人により様々ですが、主に読み・書き・計算に問題が生じます。ここでは、学習障害の大人が仕事で直面しがちな困りごとや、それらに対する対処法などをまとめて解説していきます。

 

[目次]

■学習障害(LD)とは?特徴や仕事での困りごとは?

■学習障害(LD)の人が働きやすい環境を作るための工夫

■休職・転職をするときのポイントは?

 

■学習障害(LD)とは?特徴や仕事での困りごとは?

 

1.学習障害(LD)は「発達障害」の一種です

発達障害とは、幼少期からの発達がアンバランスで、脳内の情報処理に偏りが生じている状態のことです。ある特定のことには非常に優れた能力を発揮する一方、ある分野は苦手といった特徴がみられます。

 

誰にでも得意なことと苦手なこととはあるものです。ただ、発達障害がある人はその差が非常に大きいため、生活や仕事に支障が出やすいのです。

 

発達障害は行動や認知の特徴によって、主に次の3つに分類されます。

①自閉スペクトラム症(ASD) 注意欠陥・多動症(ADHD) 学習障害(LD)

今回取り上げる学習障害(LD)も発達障害の一種です。

 

学習障害の人は「注意欠陥・多動症」や「自閉症スペクトラム障」を併発していることが多いと言われます。

 

2.学習障害(LD)の特徴

学習障害があると、どんな症状が現れるのでしょう?

人によって症状はさまざまですが、主に次の3つが挙げられます。

 

学習障害の3つの症状

・読字障害(ディスレクシア)…読むことが苦手

学習障害と診断された人の中で最も多く見られるのが読字障害で、字や文字を読むことに困難が生じます

一文字ずつ区切ってしまう「逐次(ちくじ)読み」のため音読が遅い、文字や行を読み飛ばす、読むことに精いっぱいで内容が頭に入らない、似た形の文字を誤読する など。

 

・書字表出障害(ディスグラフィア)…書くことが苦手

書き間違いが多い、書くのがとても遅いなど、字を書くことに困難が生じます。

「読み障害」と「書き障害」は一緒に現れやすいです。

 

・算数障害(ディスカリキュリア)…算数・計算が苦手

数を数えるのが苦手、暗算がとても苦手、繰り上がりや繰り下がりの算数がかなり不得意、九九が苦手など現れ方は様々です。図形の認識が困難、時計が読めないという現れ方もあり、日常や仕事が困難となります。

 

学習障害は子供の頃から始まりますが、大人になり社会にでてから障害が明らかになることもあります。今ほど学習障害が認識されていなかった時代には「勉強が苦手な子供」や「やる気がない生徒」などとひとくくりにされていたため、大人になってから学習障害に気づくのだそうです。

 

※最新の診断基準である DSM-5では、LD(学習障害)は SLD = ”Specific Learning Disorder” (限局性学習症)と変更されています。限局性とは全体的な理解力の遅れ(知的障害)がなく、「読み」「書き」「算数(計算)」など特定の課題に困難があるという意味です。しかし学習障害はLDという通称が一般的に浸透しているので、この記事においてはLD、SLDと分けず、「学習障害」と記し解説することにしました。

 

3.学習障害の人が仕事で困ることは?

学習障害があると、仕事上でどのような困りごとが起きるのでしょう?

学習障害と一口に言っても人によって障害が違うのですが、いくつか例を挙げてみると、

 

・資料やマニュアルを理解するのに人の何倍もの時間がかかる

・とっさの指示をメモすることができず、叱られる

・見積金額の提示や経理などの業務がでると苦手でパニックになる

・暗算でのお釣りの計算が極端に苦手

・日誌や業務報告などを書くのが困難

・受信したメールを理解するのに時間がかかる

 

などがあります。

 

通常、正社員で仕事を続けていくと昇進し、部下の教育や管理を任されるようになります。しかし、書字表出障害がある人は業務記録を書いたり、会議でホワイトボードに板書をするような仕事が増えたりするため、とても苦労するようです。

 

4.学習障害になる原因は?

他の発達障害と同様、学習障害の原因は先天的な脳機能の異常と考えられていますが、詳しい原因は分かってはいません。

現在根本的な治療方法はありませんが、学習障害は「知的障害」とは違うので、知能や判断力には問題ありません。障害がハンデにならない仕事を見つけ、働き方を工夫すれば、障害と付き合いながら働くことは十分に可能です。

 

5.受診は医療機関へ

学習障害の疑いがある時は読み書きや計算などの問題のほか、知的障害脳機能障害など他の疾患や障害がないか、他の発達障害などの合併がないかを診断します

しかし、全ての病院で診断ができるわけではありません。発達障害や学習障害が診断できる医療機関は少ないのが現状です。発達障害に詳しい病院を見つけるのが難しいときは、まず各都道府県に設置されている「発達障害者支援センター」や「精神保健福祉センター」などに相談すると良いでしょう。

 

■学習障害(LD)の人が働きやすい環境を作るための工夫

学習障害があっても、工夫により障害を補うことで働きやすくなります。ここでは工夫できることの例を挙げてみます。

 

困りごとの例①

会議でメモを取ること、周りの人に言われたことをメモしたいが文字を書くのが苦手、ノートを取るのに時間がかかってしまう。

対処法の例→スマホのメモアプリにメモする、資料は写真、作業工程などは動画で記録する。ボイスレコーダーなどで音声データとして保存する。

事前に了承を得るなど、周囲に障害を理解してもらうことが必要です。

 

困りごとの例②

メールや資料、マニュアルの文字を読むのが困難で非常に時間がかかる。

対処法の例→文字の読み上げソフトや、「リーディングトラッカー」という学習障害の人向けのツールを利用する。紙のマニュアルなどの場合蛍光ペンを引きながら読むと読みやすい。また、半透明の色付き下敷きを重ねながら文字を読むのも、読みやすくなる工夫です。

 

困りごとの例③

単純な数字の入力などはできるが、計算が難しい

対処法の例→音声入力で計算をする、暗算はせず電卓や計算アプリなどを使う。エクセルなどの表計算を一から作る際は他の人に計算が合っているか尋ねるようにしましょう。

 

しかし、発注数や会計など、数字にまつわる仕事はシビアなものが多いです。障害のことは周りに伝え、無理して失敗をしないようにしましょう。

■休職・転職をするときのポイントは?

気を付けなければいけないのが、学習障害により引き起こされる「二次障害」です。

読み書き計算が遅く上司から叱責される…。人前での板書に失敗し、同じ失敗をしないかと強い不安を感じる…。学習障害のためストレスが高じ、うつや適応障害など他の精神疾患になってしまった場合、それらを二次障害と言います。

 

 

ポイント1.専門医のもとで治療する

発達障害の人は気づかぬうちに二次障害を抱えていることが多く、症状が悪化すると重度のうつや引きこもりになる場合もあります。そうなると本人や家族も辛いですし、社会復帰には時間がかかります。

もしも、「連日気が重いな」「夜眠れない日が続いている」など、心身に異変を感じている場合、早めに専門医を受診し、治療をするようにしてください。

 

もしも専門医から休職を勧められたら、職場に休職の相談を申し入れてください。真面目な人ほど「会社に迷惑をかけてはいけない」と無理をしたくなるものですが、長く働く上で体調管理は大切なことです。できるだけ心身を休めることを優先にしてください。

 

その後、回復期に入ったら職場復帰に向け準備を進めていきます。復帰のタイミングや慣らし出勤を設けるかなど、専門医と会社に相談してください。

 

ポイント2.自分にあった仕事に転職する

業務の内容が学習障害の症状とどうしてもマッチしない場合、いくら工夫をしても他の人より時間がかかってしまいます。復職しても環境が変わらないのなら、思い切って転職も視野に入れてみてください。

 

学習障害の症状には様々あるので、何の仕事が向いている、向いていないとは一概に言えません。

自分自身の障害を知り、マッチする仕事に出会えるかがポイントとなります。一般就職でうまくマッチングすることもありますが、面接などで「学習障害により苦手とすること」は伝えておくようにしてください。

 

しかし、学習障害の特性から「やる気がない」「教えてもできない社員だ」などと誤解され、学習障害の本人も周囲も互いにストレスを感じるケースもあるでしょう。

 

ですから、一般就労が難しい場合、ハローワーク人材紹介会社(障害者専門の転職エージェントなど)の紹介で、障害者雇用枠の仕事に就くのもおすすめです。ハローワークには障害者専門の窓口があります。近年障害者雇用の増加から障害者専門の転職エージェントなども存在しています。障害者の積極的な採用を行っている会社の求人に応募することができ、基本的に無料で仕事を紹介してもらえるので積極的に利用してみてください。

 

ポイント3.職場復帰支援プログラムを活用してみる

「障害と付き合いながら働く自信がない」「自分にあった仕事が分からない」と、社会復帰することに不安を感じている人はリワークを利用してみるのもよいでしょう。

リワークとは、return to workの略語です。精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。(引用:一般社団法人日本うつ病リワーク協会)

 

仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後に精神疾患を再発しないための認知行動療法、SST、アサーションなどさまざまなプログラムが行われます。休職になった時の働き方や考え方を振り返り、自分の気質やコミュニケーションの傾向を認識しトレーニングで改善することで、適切な職場復帰と症状の再発を防止することが狙いです。

 

リワークプログラムは医療機関をはじめ、民間のリワーク施設、公的施設(障害者職業センターなど)で受けることができます。施設によって費用は変わります。医療機関の場合は、自立支援医療制度の対象になるため自己負担額は軽減されます。

 

民間のリワーク施設で障害福祉サービスとしてリワーク支援を行っている場合は、自己負担額は1日800円~2,000円で事業所によって異なります。ただし、ご自身の世帯収入に応じて月額上限が決められており、目安として、生活保護世帯や300万円以下の場合は0円、300万円~600万円の場合は9,300円、600万円超の場合は37,200円となっています。公的施設の場合は、費用はかかりません。

■まとめ

学習障害は発達障害の一種で、障害の現れ方は人により様々ですが、主に読み・書き・計算に問題が生じます。

先天的な障害のため、治療する薬などは現在ありませんが、電子機器などをうまく使用することで弱点をカバーすればぐっと働きやすくなるでしょう。

 

困ったときは公的な相談機関や民間の支援機関に相談し、あなたらしく働くきっかけにしてみてください。

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