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高次脳機能障害の人が仕事をする・職場復帰する上で気を付けるべきポイントまとめ

身近に交通事故や脳卒中などのため治療を受けて復職された方はいませんか?以前と比べ「仕事のミスが増えた」「新しい仕事をなかなか覚えられない」「突然に怒り出し人格が変わったみたいだ」という方はいませんか。それはもしかすると、高次脳機能障害の症状かもしれません。

高次脳機能障害は外からでは見えにくい障害と言われていますが、日常・社会生活に大きな影響をもたらすため、まずは本人が自分の障害を正しく理解すること、周囲から理解してもらうことが必要です。ここでは高次脳機能障害の症状と、復職するために気を付けるべきこと、同じ職場の高次脳機能障害の人がどうしたら働きやすくなるかについて解説していきます。

 

[目次]

■高次脳機能障害とは?どんな症状?

■高次脳機能障害の人に向いている仕事は?復職のポイント

■高次脳機能障害と付き合いながら働くには?ポイント5つ

■高次脳機能障害とは?どんな症状?

 

高次脳機能障害は、事故や脳血管疾患によって脳に損傷を負い認知機能(神経心理学的機能)が低下する障害です。知的機能に障害があるため日常生活や社会生活に支障のある状態を指します。

 

高次脳機能障害になる原因の8割は脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患)です。約1割は事故などによる頭部外傷、残り1割は、脳腫瘍、脳炎、エイズ脳炎など感染症、正常圧水頭症、全身性エリテマトーデス、神経ベーチェット病などの自己免疫疾患、アルコール中毒や薬物中毒など様々です。

 

高次脳機能障害になる原因を年齢別に見ると10~20歳代では事故などによる頭部の外傷が多くを占め、年齢が高くなるにつれ脳血管障害を原因とする割合が上がり、60歳以上では約90%に達します。

脳血管障害は高血圧などを基盤にして起こることが多いので、生活習慣病のある人は、運動・食事・薬物治療をして脳卒中を起こさないことを心がけましょう。

 

高次脳機能障害の主な症状には、失語、半側空間無視、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。

 

 

仕事上で現れやすい高次脳機能障害による症状の例

(1)記憶障害

脳卒中や脳外傷などにより生じる記憶障害の場合、以前の知識などの記憶は保たれていても、新しいことを覚えることが困難になりがちです。

例…備品や書類の置き場所を忘れてしまう、新しい機器の使い方が覚えられない、記憶が突然飛ぶことがある、同じことを質問する など

 

(2)注意障害

特定の物や課題に注意を集中し続けることが難しくなります。作業を行いながら他のことに気を配ったり、作業の途中ですぐに他の作業に切り替えたりするのが難しい場合もあります。

例…ぼーっとしている、作業中に電話がかかってきても出られない、作業の途中で単純ミスが出やすい、集中力が続かない など

 

(3)遂行機能障害

仕事などの計画を立てることや、優先順位を決めること、効率的な手順で作業を行うこと、臨機応変な対応が難しくなります。

例…計画を立てることが困難、無駄に見えるような作業が多く時間がかかる、仕事に必要な用具や材料を準備することが難しくなる など

 

(4)社会的行動障害

情動面の障害が起こることがあります。

例…急に興奮し怒り出す、感情のコントロールができない、相手の気持を推察することが難しい、自己中心的にふるまうことがある など

 

(5)失語症

いろいろなタイプがあります。主に、話す、聞く、読む、書く、計算するなどの言語を介した能力に制限が生じます。

例…仕事の指示に返事はするが内容自体を理解していない、報告書など文書を書くことが難しい、名前や物などの名称が出づらい など

■高次脳機能障害の人に向いている仕事は?復職のポイント

 

・できれば同じ職場に戻りたい…

労働省の「中途障害者の職場復帰に関する研究会」の報告書によると、中途障害者が退院後に希望する進路は、「職種は変わっても発症前と同じ会社にいたい」という回答が57.1%で最も高いそうです。

 

高次脳機能障害の人にとって新しいことを覚えるのは難しい場合があります。ですから、同じ職場に戻ることができれば精神的な負担が少ないですし、もともと人間関係ができている職場からはサポートを得やすいという利点があります。

 

高次脳機能障害は外見では分かりにくいのが特徴です。復職後、同じ職場の人からすると「どこに障害があるのだろう?」と不思議に思うかもしれません。しかし、実際に仕事を開始すると、ミスが多かったり、手を止めてぼんやりしていたりと、「以前とは別人のようだ」「あの人は復職してから怠けている」と誤解されてしまうこともあります。

そのため、高次脳機能障害の復職者を迎える際は職場のサポートが不可欠です。

 

・高次脳機能障害の方が職場に復帰するまでの流れ

職場復帰は本人・会社・担当医師が連携しながら、次のように進めていきます。

 

・復職の時期を主治医(または産業医)などと決める

・症状による仕事の得手・不得手なことを確認し、復職後の業務内容を検討する

・慣らし出勤を行う(復職後は徐々に勤務時間を増やしていく)

・ 実際の就業状況を見て、修正や変更を行う

・ 職務遂行や人間関係などの相談を受ける窓口を設ける

 

このようにして、高次脳機能障害の人が職場復帰できるようにします。しかし、会社の人事・総務部の人が必ずしも精神疾患・機能障害を持つ社員への対応に慣れているわけではありませんし、復職社員の職場定着まで継続した支援は必要となります。その場合、外部の相談窓口として民間の障害者福祉サービスを活用することも可能です。

 

・高次脳機能障害の人に向いている仕事は?

残念ながら、以前と同じ様な仕事ができず、転職せざるを得ない場合もあります。それでは高次脳機能障害の人に向いているのはどのような仕事でしょう?

 

決められた仕事を繰り返し行うような定型作業や、自分で都度、判断する必要がない職種は高次脳機能障害の人でも働きやすいと言えます。具体的には、物流センターなどでの軽作業(仕分けやカート作業など)、店舗内の清掃業務、データ入力などの事務作業がよく選ばれます。

■高次脳機能障害と付き合いながら働くには?ポイント5つ

高次脳機能障害によくみられる特徴として、記憶力や注意力の低下が挙げられます。以下のような取り組みをすると、ぐっと仕事がしやすくなるでしょう。ここでは5つのポイントを解説します。

 

ポイント①メモ・チェックリストで作業を確実にする

注意障害や記憶障害があると、ミスや忘れ物が多くなります。

ミスが起きやすい工程については、手順を書面にします。チェックリストを作るのもよいでしょう。口頭指示だけでなく一緒に作業を進め、繰返しによる積み重ね、ダブルチェックを行うことも効果的です。

 

ポイント②スケジュールやタスクを書き出す、図表にする

仕事を「見える化」することで思考や記憶が整理されます。やるべきことが明確になり集中することができます。

工程表などは自分が見やすい場所に掲示しましょう。遂行機能障害がある人は、作業に優先順位がつけられません。ですから、どの順番でやっていくのかをはじめに指示してもらいましょう。工程表や手順書等は視覚的に分かりやすい図表などがおすすめです。

 

ポイント③仕事は一つずつ行う

作業指示の内容や手順をよく忘れてしまう場合、1つの仕事が終わってから次の仕事の指示をするなどの配慮が必要です。集中力がなくミスが起きている時は、30分~40分で1セットの仕事に分け、1セットが終わるたびに数分の休憩をとることで集中力が途切れることが少なくなります。

 

ポイント④職場からの理解を得る

障害を持つ前には仕事をバリバリこなしていた方に多いのが、かつての能力のイメージで仕事を進めようとしても注意障害や記憶障害などのために上手くいかず、苛立ちから人間関係が上手くいかなくなるという状況です。

高次脳機能障害の本人が、実は自分の感情の起伏に気付かないことがあります。まず自分の状態を客観的に認識し、職場の人に得意・不得意なことを伝えて理解してもらうことが何より大切です。

 

ポイント⑤支援機関・福祉サポートを活用する

高次脳機能障害の人が社会復帰するまでには、「自分の障害を理解する」「訓練しスキルを磨く」「感情コントロール、社会的スキルの向上」などのステップが必要です。ここでは高次脳機能障害の人が使える支援機関や福祉サービスをいくつか紹介します。

 

高次脳機能障害にまつわる困りごとには、各都道府県に設置されている「高次脳機能障害支援センター」や「障害者職業センター」へ相談してください。

高次脳機能障害と付き合いながら働ける仕事を探したい場合は、ハローワーク(障害者専門支援の窓口である専門援助部門)や、ソーシャルトレーニングから就職活動までを支援する「就労移行支援事業所」があります。とにかく働ける場所を探したい、重度の高次脳機能障害なので無理のない範囲で社会復帰したいという方は「就労継続支援事業所」が良いでしょう。

 

休職から職場復帰に向けたリハビリ・訓練を受けられる「リワーク」もあります。

リワークとは、return to workの略語です。精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。(引用:一般社団法人日本うつ病リワーク協会

 

仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、認知行動療法、SST、アサーションなどさまざまなプログラムが一人一人の状態にあわせて行われます。

 

民間のリワーク施設で障害福祉サービスとしてリワーク支援を行っている場合は、自己負担額は1日800円~2,000円で事業所によって異なります。ただし、ご自身の世帯収入に応じて月額上限が決められており、目安として、生活保護世帯や300万円以下の場合は0円、300万円~600万円の場合は9,300円、600万円超の場合は37,200円となっています。公的施設の場合は、費用はかかりません。

■まとめ

高次脳機能障害とは、事故や脳血管疾患によって脳に損傷を負うことによって認知機能が低下する障害です。障害を抱える前のように日常生活や仕事ができず、ギャップに葛藤を抱え、悩む人も少なくありません。

 

高次脳機能障害は外からでは見えにくい障害と言われていますが、記憶が突然飛んだり、集中力が途切れたりといった症状から仕事上のミスが増えたり、突然感情的になるといった困りごとが起こります。以前と同じような社会生活を送ることは困難になるため、まずは本人が自分の障害を正しく理解すること、そして周囲から理解してもらうことが必要不可欠です。

 

自分や家族だけでリハビリや通院を行いながら働く準備をすることに不安を感じる場合、民間・医療機関・公的機関の支援制度や福祉サービスも活用してみてくださいね。

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