病気やケガにより、障害を持った方が生活費を賄うために、加入している保険から支払われるのが障害年金です。精神疾患になり生活や仕事が困難になった人は、若い世代の方でも障害年金の受給対象になります。
今回は障害年金の受給対象、受給の条件、申請方法などを解説していきます。
[目次]
■障害年金とは?若い世代でももらえるの?
■障害年金の対象になる症例は?
■障害年金受給に欠かせない3つの条件とは?受給できる金額は?
■障害年金を申請するための障害認定基準
■障害年金を申請する際のポイントは?
■ご自身での申請が難しい場合は
■障害年金とは?
「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、就労、あるいは日常生活を送ることが困難な人に受給される公的年金の総称です。精神疾患になり生活や就労が難しくなった人は受給対象になります。
■若い世代でももらえるの?
障害年金は現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
年金と聞くと定年後にもらえる、高齢者が受給するものといったイメージがあるかもしれません。
ですから、障害年金を受給する資格があるにも関わらず、請求されていない方がとても多いと推測できます。
■障害年金の対象になる症例は?
精神疾患なら、うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害、自閉症スペクトラム障害、知的障害、てんかん、神経症、高次脳機能障害などが対象となります。
子供の発達障害や 知的障害などについては、20歳になってからの申請になります。
障害年金の認定でポイントなのが「初診日」です。障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日のことを初診日と言います。
■障害年金受給に欠かせない3つの条件とは?
障害年金は次の3つの条件を全て満たさないと受給できません。
- 年金に加入し保険料を納めている期間中に発病し、精神疾患と診断されている。
- 年金の納付義務が発生してから初診日の前々月まで、年金を3分の2以上納めている。あるいは、初診日の前々月からさかのぼりこの1年間、年金を納めている。
- 制度に定められている等級の精神疾患をもっていると証明できる(医師の診断書を添付する)。
②の年金納付については特に注意が必要です。例えば金銭的に年金の納付が困難で、役所に免除申請をしている場合はそれで構いません。
しかし、免除の申請も怠って年金未納になってしまっていると、受給資格から外れることがあります。いざという時のために年金の納付・免除申請などは怠らないようにしておきましょう。
ただし、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。そして、あくまで初診日以前の保険料納付のことであり、初診日以降は問われません。
■障害年金には2種類ある
障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類に分かれています。
1.障害基礎年金
障害の原因になった病気やけがについて、初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金に加入していた人が受給することができるのが「障害基礎年金」です。
国民年金に加入するより前、子供の頃から障害を持ち、その状態が続いている場合にも給付されます。
2.障害厚生年金
障害の原因になった病気やけがについて、初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、厚生年金に加入していた人に支給されるのが「障害厚生年金」です。
障害基礎年金に上乗せして給付される報酬比例の年金となっています。
なお、障害年金は非課税なので所得税や住民税が控除されることはなく、満額を受給することができます。
■受給できる金額は?
受給できる金額について、障害基礎年金と障害厚生年金に分けて解説していきます。受給できる金額は等級によって変わるので、まず障害者等級から簡単に説明します。
- 障害者等級とは?
障害等級とは障害の状態を分けたものです。重度の障害等級から1級、2級、3級とされています。1、2級は国民年金法施行令により、3級および3級より軽度の障害状態は厚生年金保険法施行令で定められています。
厚生年金に加入している場合は1級~3級のいずれかに該当しているならば障害厚生年金を受給することができます。また、障害等級が3級に達していなくても条件を満たしていれば「障害手当金」という一時金が支払われます(障害基礎年金には障害手当金はありません)。
- 障害基礎年金
障害基礎年金の金額は一定ですが、受給できる金額は等級によって変わります。
- 1級 976,125円+子の加算※
- 2級 780,900円+子の加算※
※子の加算…第1子・2子は一人につき224,500円。第3子以降は一人につき74,800円。
この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子
- 障害厚生年金
厚生年金に加入していた場合、先ほどの障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。
上乗せ額は、厚生年金の加入期間やその期間の給与の平均額などで異なります。
- 1級 報酬比例の年金額×1.25(+配偶者の加算)+障害基礎年金1級
- 2級 報酬比例の年金額(+配偶者の加算)+障害基礎年金2級
- 3級 報酬比例の年金額 (最低保障額586,300円)
障害手当金(一時金) 報酬比例の年金額×2年分 (最低保障額1,172,600円)
「障害厚生年金 シミュレーション」などで検索すると、おおよその受給金額が分かるサイトが見つかります。
■障害年金を申請するための障害認定基準
障害年金を受給するには、医師による病気の診断書が必要となります。
受給できる年金の額は障害の等級によって変わりますが、日本年金機構により障害者認定基準が発表されていますので、障害年金の受給を考えている際はご自身がどの等級に当たるか、見てみてください(記事の最後にリンク先はまとめて記載させていただきました)。
障害の程度1級
他人の介助なしには、日常生活がほとんどできない障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方、入院や在宅介護を必要としベッドでの寝たきり状態に近い方は、1級に相当します。
障害の程度2級
必ずしも他人の介助は必要ではないが、日常生活は極めて困難な方。労働によって収入を得ることができません。例えば、簡単な家事などの軽い活動はできても、それ以上重い活動や就労などの責任が生じるような活動はできない方。入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方は2級に相当します。
■障害年金を申請する際のポイントは?
・障害年金の請求(申請)手続きの進め方
精神疾患により障害年金を請求する場合、大まかに次の様に手続きをすすめます。
- 初診日を調べる
- 医師に診断書の作成を依頼する
- 「病歴・就労状況等申立書」を作成する
提出先は「障害基礎年金」の場合は市区町村役場の窓口、「障害厚生年金」の場合はお近くの年金事務所になります。
・申請時のポイント
精神疾患による障害年金認定では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が特に重要なポイントになります。
このうち「日常生活能力の判定」は、患者が一人暮らしであると仮定して医師が記載することになっています。受診の際、医師の前で気丈に振る舞っていませんか?そのような場合は、日常生活能力がきちんと診断書に反映されない可能性があります。
普段から医師とコミュニケーションを取り、日常生活の状況をできるだけ正直に伝えるようにしましょう。診断書を依頼する時には、これまでや最近の日常生活状況をまとめたメモを渡したり、日常の様子を知っている家族に説明してもらったりするのも有効な方法です。
また、働きながらも障害年金を受給できる可能性はあります。
しかし、精神の障害の場合、他の病気と比べて病気の程度を表す明確な指標がないため、就労しているという事実では日常生活能力があると見られたり、障害の状態が軽くなっていると判断されたりする可能性があります。
ですから、精神疾患で障害年金を申請する時は、障害認定基準に記載されているように、仕事の種類や内容、就労状況、仕事場での援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを審査側に説明する必要があります。
■ご自身での申請が難しい場合は
障害年金について解説してきましたが、実際の申請時には提出する書類が多く、それらを用意することが、精神疾患を抱えている方にとって大きなストレスになる場合があります。代行手数料はかかりますが、社会保険労務士に申請を代行する方も多くいます。
代行を依頼すると、申請手続きの手間が大幅に減る上、審査に通る可能性も上がります。
無料相談を行っている社会保険労務士事務所もあるので、問い合わせてみるのもよいでしょう。
障害年金について詳しく知りたい場合、詳しくはこちらもご覧ください。
あなたの年金納付記録はここから↓
障害等級判定のガイドラインはこちら↓
■まとめ
病気やケガにより、障害を持った方が生活費を賄うために、加入している保険から支払われるのが障害者年金です。精神疾患になり生活や仕事が困難になった人は、若い世代の方でも障害者年金の受給対象になります。
年金の未納があると受給対象から外れてしまうこともあるので、必ず納付するか、納付が困難な場合は免除や減額の申請をしておきましょう。