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「てんかん」とは?多くの人が誤解していること

「てんかん」という病名を聞いたことがありますか?

「突然卒倒し手足をバタバタさせる、なんとなく怖いイメージ」「てんかんの人に車の運転をさせたらいけない」「職場で倒れられても困るから、残念だけど採用はできない」

 

てんかんに対する誤解や偏見はまだまだ多いのが現状です。てんかんを持つ方の中には、就労意欲や能力が十分にあるにもかかわらず、なかなか仕事に就くことができない方もいます。

 

今回は、てんかんについて誤解されやすいことと、てんかんの方が安心して働くためのポイントなどを解説していきます。

 

[目次]

■てんかんとは?てんかんになる原因は?

■「てんかん」について誤解されやすいこと

■てんかんの症状は?治療法は?

■てんかんと精神疾患の関係は?

てんかんの方が安心して働くためのポイント

 

 

 

■てんかんとは?

てんかんとは、「脳の神経細胞が過剰に興奮することによって、特定の発作が繰り返し起きる」という慢性的な脳の疾患です。実は、およそ100人に1人の割合で発症する、とても身近な病気でもあります。

 

てんかん発作にも様々な症状があります。全身がけいれんするというイメージを持たれやすいですが、会話中に1分間ほど意識が飛ぶ、意識はあっても腕などが勝手に動く、体の一部がしびれるなど、発作の現れ方は人それぞれです。

 

■てんかんになる原因は?

大脳では、沢山の神経細胞(ニューロン)が繋がっています。このニューロンのネットワークが、微弱な電気信号をやりとりすることで活動しています。

しかし、強い電気刺激により異常な電気活動(電気発射)を起こすことがあります。てんかんの発作は、このニューロンの電気発射が外部からの刺激なしに自発的に起こることが原因です。

てんかん発作の原因である 異常放電と、ニューロンの過剰興奮は、よく「電化製品の回路のショート」に例えられます。そして、過剰な興奮が起きる脳の部位により、発作の症状が異なります。

 

 

 

■「てんかん」について誤解されやすいこと

 

  • てんかんの人は車の免許を取得できない

かつては、てんかんの人は車の運転免許を取得することができませんでした。

しかし、2002年6月の道路交通法改正で、自動車等の安全な運転に支障があるかどうかは個別に判断され、条件を満たせば免許が取得できるようになりました。

てんかんの方が免許を取得する条件は、おおまかには「運転に支障するおそれのある発作が2年間ないこと」 です。薬の服用の有無は関係ありません。

 

なお、運転に支障するおそれのない発作(単純部分発作など)の場合には1年間以上、睡眠中に限定された発作がある場合には2年間以上経過観察し、今後症状悪化のおそれがない場合には取得可能です。

ただし、きちんと治療を受けて服薬を欠かさず、運転をすると分かっている日の体調管理には気を付けるなど、ドライバーとしての責任を果たすことは忘れてはいけません。

 

 

  • てんかんがあると普通の仕事はできない

てんかんをコントロールしながら仕事をしている方は沢山いらっしゃいます。

薬の服用で発作がうまくコントロールされ、発作以外の問題がなければ、大半の仕事は問題なく遂行できるようになります。

しかし、定期的な通院や薬での治療は必要です。治療が不十分で発作が抑えられない場合、周囲の人を驚かせたり、自分が卒倒しケガをしたりすることがあるかもしれないので注意は必要です。

 

 

  • てんかんは不治の病

てんかんは一生治らない“不治の病”だと思われてきました。現在では、適切に療法を行うことで、発作の消失、もしくは発作の回数を減少させることができると分かっています

発作が消失している期間が、小児なら2年~3年、成人なら5年以上続いていて、主治医が服薬の中止が可能であると判断した場合、ゆっくりと薬の量を減らしていくことになります。

 

明確な指標があるわけではないものの、服薬を中止した後も発作の再発がなければ、「てんかんが治癒した」と考えてもよいとされています。

しかし、薬の中止後に発作が再発する場合もあるので、半年から1年に1回程度は脳波検査を含む検査を定期的に受け、経過を見ていくことが必要です。

 

 

  • 発作を予防することはできない

睡眠不足や疲労、緊張、炎天下での作業はてんかん発作のきっかけになると言われています。特に睡眠不足があると発作が起きやすくなると分かっています。

ですから、無理を避け、規則正しい生活を送ることで発作リスクを下げることができます。

 

 

 

■てんかんの症状は?

てんかんの症状は様々ですが、代表的なものは4つです。

・意識を失い、全身がけいれんする発作

意識は消失し、体が制御できなくなります。目を開いたまま瞳は上転し、呼吸が一時的に止まったり、強いけいれんを起こしたりします。

 

■意識は残ったまま、体の一部が勝手に動く発作

意識は残ったまま、両手足が一瞬ピクッと動くミオクロニー発作や、首や目が勝手に動いてしまったりする運動発作もあります。

 

■話の途中などに急にぼーっとしてしまう発作

会話の途中などに突然意識を失い、体の動きが止まる欠神発作があります。発作が起きる直前までしていた動作を意識のない間も続けるので、ぼんやりしたまま動き回ることもあります。1分ほどで回復しますが、意識を失っていた間のことは覚えておらず知らないところまで歩いていたということもあります。また、一時的にはっきり喋ることができなくなる失語発作もあります。

 

■自覚症状のみの発作

光が見えたり耳鳴りがしたりするなど視覚・聴覚に異常が起こる「感覚発作」、体の一部がしびれたり感覚がなくなる「体性感覚発作」、不安や恐怖感に襲われる「精神発作」もあります。

これらは周囲からは分からないこともあり、てんかん発作だと気づかれにくいです。

 

 

 

■てんかんの治療法は?
てんかんは、正しく診断・治療をすれば、 6~8割の方の発作は治まり、就労を含む日常生活が可能になると言われています。

てんかんの治療は主に薬物療法(抗てんかん剤)が取られます抗てんかん剤は長期間服薬するもので、勝手に服用を止めないことが大切です。

 

また、脳の一部分(焦点)を切除することで発作を起こりにくくする外科治療もあります。これは脳の病変部分がはっきりしている症候性てんかんに対して行われ、外科治療で完治できる場合もあります。

 

 

■てんかんと精神疾患の関係は?

てんかん自体は脳の疾患で、精神疾患ではありません。しかし、精神症状が併発する方が2割~3割程度いると言われています。

 

脳の機能異常として てんかんと精神疾患は双方向的に発現しやすく、また、てんかんを抱えながらの生活上のストレスから、精神疾患が現れることもあります。

深刻なケースで精神医学的な対応が必要となり、併発する精神疾患の種類としては うつ状態、幻覚妄想状態、心因性発作などがよく見られます。

 

 

てんかんの方が働くために気を付けることは?

てんかんと上手く付き合いながらも、多くの人が社会に出て働いていらっしゃいます。てんかんの方が就業する際は、定期的な通院と治療を継続しながら、体調管理を怠らず、自分の症状をコントロールすることが必要です。

 

■てんかんの方の仕事選びで注意すべきこと

発作の症状や仕事内容によっては就業制限がある場合もあります。

例えば、てんかん発作で意識がなくなる方や、勝手に体が動く発作のある方は、乗り物の運転や高所での作業に制限がある場合もあります。

免許は取れたとしても、自動車運転を主業務とする仕事に就くことを検討する際は慎重に考える必要があります。主治医と相談しながら判断するようにしてください。

 

また、発作のリスクが高まる可能性があるので、夜勤のある仕事、肉体を酷使する長時間労働なども、症状によっては避けた方が良いとされます。

 

■てんかんのことを職場に伝えるべきか?

「自分の症状のことを職場に伝えるか否か…」多くのてんかんの方が悩むところです。

職場に告知することのデメリットは、任せてもらえる仕事の範囲が狭まってしまうことがある、周囲からの正しい理解が得られず怖がられる可能性がある、採用担当者が病気に対して誤解をしていて不採用になる、などです。

 

しかし、病気のことを事前に伝えることでメリットもあります。

勤務時間や業務内容で合理的配慮が得やすくなりますし、万が一発作が起きた場合の対処法について周囲の方に理解してもらえれば、発作時の症状や、救急車を呼ぶか否かなど、いざという時に周囲が慌てることなく対応してもらえるようになります。

 

面接時に伝えるのか、就職してから打ち明けるのかなど、主治医や就職支援の相談員等とも話しあい、検討してみてください。

 

■てんかんの症状のため仕事が続かない時は…

てんかんに対する誤解は、払拭されているとは言い難いのが現状かもしれません。

てんかんのことを隠して車の運転をし、薬の服用を怠った末に発作から交通事故を起こした…

一部の方が起こした事件の印象から、「てんかんは危険だ」というような誤解がなかなか抜けきっていません。

自分だけでは就職活動が難しいと感じている場合は、一人で抱え込まずにハローワークの障害者窓口や、障害者就業・生活支援センターに相談して手助けをしてもらってください。

 

 

まとめ

てんかんは慢性的な脳神経の病気です。かつては「不治の病」と思われていましたが、適切な診断と治療を続ければ発作を消失・軽減することができ、普通の人と同じように仕事をすることも可能です。

ただ、発作の症状と頻度によっては 乗り物の運転や高所での作業ができないなどの制約があることも。自分一人で就職活動をすることも可能ですが、必要に応じて就労サポートも活用すると安心でしょう。

仕事選びや職場選び、病気のことを公表する場合はそのタイミングなどについてアドバイスをもらうことができます。

就職が決まったら、しっかりと睡眠をとり体の無理をし過ぎないなど体調を整えること、そして抗てんかん薬を服用している人は必ず服用し、定期的な診断は続けることが大切です。

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