「ひきこもり」とは、仕事に行かず、家族以外の人との交流をほとんどせず6ヶ月以上自宅にひきこもっている状態のことです。学校に行かない場合は「不登校」と言われます。
ひきこもりは全国で約70万人、不登校は約12万人以上いると言われています。ひきこもり自体は病気ではないのですが、うつ病や発達障害などのメンタルヘルス不調が原因で社会に適応できずひきこもりになるケースは多いです。
うつ病を発症し、会社の休職を繰り返すうち退職になり、転職に失敗したショックでひきこもってしまい、そのまま10年、20年ひきこもりが続く…というような事例は決して少なくないのです。
今回はひきこもりの原因と精神疾患との関係、ひきこもりにならないためにどうしたらいいかを解説していきます。
[目次]
■ひきこもりとは?なぜひきこもりになるの?
■長期化・高齢化しているひきこもり
■ひきこもりとメンタルヘルス不調の関係とは?
■メンタルヘルス不調による休職期間中にリワーク機関を利用するとよい理由
■ひきこもりとは?
厚生労働省は、「ひきこもり」を次のように定義しています。
【ひきこもりの定義…就学、就労、交遊などの社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態】
ひきこもりは“状態”を現す言葉ですから、“病気”という定義ではないということです。実際、ひきこもりになる原因は精神疾患だけではなく様々で、ひきこもりになる原因もひとくくりにはできません。
自分の部屋に閉じこもって出てこないという状態だけではなく、短時間の外出(買い物や映画鑑賞など)に行けるような方でも、家族以外の人と関わりがなければ、軽度のひきこもりと判断されます。
■なぜひきこもりになるの?
「ひきこもりになりやすい人の性格は…」などと性格の特徴をひとくくりにされることがありますが、実際引きこもりになる人の性格はかなり多様です。そしてひきこもりになる原因も様々です。
ひきこもるきっかけとして最も多いのは、受験や就職での失敗、失恋やいじめなどの対人関係の失敗経験です。中学校や高校で不登校を経験している場合もありますが、退職や解雇の経験などをきっかけにひきこもりなることもあります。
そして今回のタイトルにもあるように、メンタルヘルス不調の症状が要因でひきこもり状態に至るケースも多々見られます。これは後ほど解説していきます。
■長期化・高齢化しているひきこもり
現在、ひきこもりの状態にある人は全国でおよそ115万人いるとされていますが、正確な人数は分かっていません。男女比率は女性より男性のほうが多く、また40歳以上の人が半分以上を占めます。
ひきこもり問題が注目され始めた2000年頃は、若者世代が中心だったひきこもりですが、現在は中高年が中心になり、ひきこもり期間も長期化しています。
ひきこもりになった当人を取り巻く家族(多くの場合は親)も苦しみます。日本社会では、就業・就職・結婚というように、エスカレーターの様に社会的自立をすることが求められます。
ただ、受験や就職に一度失敗すると、再びレールの上に戻るのが難しくなります。
彼らを最終的に受け入れるのは親で、「自分の子育てがまずかったせいだ」という親自身の自責の気持ちや、「子の問題だから親が責任を持つべき」といった世間の圧力が背景にあります。
ひきこもり状態からなかなか脱出できず、子が中年になったとしても親元で「子ども」として過ごすというケースが近年増加しています。
平成30年度調査の結果により、全国の満40歳から満64歳までの人口の1.45%に当たる61.3万人がひきこもり状態にあると推計されました。
いわゆる「8050問題」は、80歳代の高齢の親、50歳代のひきこもりの子どもが社会から孤立し貧窮するというケースで、大きな社会問題になっています。
■ひきこもりとメンタルヘルス不調の関係とは?
メンタルヘルス不調を抱えていることで、ひきこもりを余儀なくされている方も多くいます。
統合失調症、うつ病、強迫性障害、パニック障害などの症状のため、不安や対人恐怖などが強く、人と会うことが困難になったり、起床や外出が難しく、ひきこもらざるを得なくなったりします。
また、発達障害や軽度の知的障害を持つ方の中には、障害のことを周囲に理解されず、職場や学校など社会生活を苦痛に感じる方もいます。
人間関係のストレスから回避するためにひきこもるものの、社会復帰と逃避を繰り返しながら、だんだん状態が悪くなっていきます。
ひきこもりの原因となり得るメンタルヘルス不調には以下のようなものがあります。
- 適応障害
職場でのいじめや上司からのパワハラなどをきっかけに不安や抑うつ気分が出現し、不登校・ひきこもりに至ることがあります。適応障害から気分障害や不安障害などほかの症状へと発展し、結果的にひきこもりが長期化することは珍しくありません。
- 不安障害
大勢の前での発表や電話対応、満員電車に乗っての通勤などに強い不安を感じます。パニック発作が頻発するようになると、発作の出現を恐れて外出を控えるようになり、ひきこもりになることもあります。
- うつ病
うつ病になると意欲が低下して、以前は楽しめたことが楽しめなくなります。「自分はだめだ」「会社に申し訳ない」という過剰な自責の念を持ちやすく、外に出たいと思えなくなります。
他のメンタルヘルス不調にも言えますが、まず病気を治療しなければひきこもり状態から脱出することは難しくなります。
- 統合失調症
統合失調症の症状である 幻覚、妄想などからくる 不安感・警戒心から家に閉じこもることがあります。
また陰性症状と呼ばれるうつ病に似た意欲の低下が現れると、外出や人との交流を求めなくなり、結果的にひきこもりに至ることがあります。
また、妄想的な発言を繰り返すことで、周囲との人間関係が悪化し、距離を置かれることもあります。
統合失調症に対する世間の偏見は未だ強いため、本人ではなく家族が外出を禁じ、その結果ひきこもりに至っているケースも存在しています。
- 発達障害
脳の成長がアンバランスなため、できること・できないことに差が生まれます。そのため、小学校~中学生時代にいじめの対象になり、不登校になることがあります。成人してからも対人関係が苦手で、職場での人間関係作りに挫折し、ひきこもることがあります。
■メンタルヘルス不調による休職期間中にリワーク機関を利用するとよい理由
もしあなたがメンタルヘルス不調で休職してしまったり、仕事を辞めてしまったりしたら、「リワーク」を利用して復帰の準備をすることをおすすめします。
リワークとは、return to workの略語で、精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。
復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。
リワークは、主に 医療機関、地域障害者職業センター、障害福祉サービス事業所(自立訓練など)で受けることができます。
生活リズムを整えるために、毎日同じ時間に通所するトレーニングから始めます。始めは週3日から始め、体が慣れてきたら週5日など増やしていきます。
また、仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、認知行動療法、SST、アサーションなどさまざまなプログラムを行い、復職できる心と力をつけるためスキルを身に着けていけます。
リワークを利用して再就職した場合、利用しなかった場合より再休職率が低いことが明らかになっています。
数か月という時間は必要になりますが、ストレスマネジメントやコミュニケーションスキル、自己管理能力を高めて準備をしっかりすることで、新しい職場で安定して長く働けることにつながるでしょう。
リワークについての情報はこちらの記事を参考にしてください。
休職中にリワークを利用することで得られる多くのメリット。具体的なプログラムや内容を解説
「働くという当たり前のことができない…」と、自分を責めすぎてしまう方がいます。
しかし、「働いていないなんて、世間体が悪い」と、休職していることを人に知られないよう家に閉じこもったりしているうち、外に出て人とコミュニケーションを取るのが怖くなる、という負のループに陥ってしまいます。
メンタルヘルスの不調で仕事にまで支障をきたしているのなら、休職して治療に専念することは必要なのです。メンタルヘルス不調はなにも特別な病気ではなく、誰だって発症する可能性がある病気です。じっくり心と体を休めて、意欲が少しずつ湧いてきたら、社会に復帰する準備を始めましょう。
転職活動に失敗したショックでひきこもり、そのままズルズルと10年、20年とひきこもりが続く…という例は決して少なくありません。一人で転職活動をすることに不安を感じてリワークを利用される方も多いです。
リワークを利用して転職活動をすると、スタッフが寄り添って、客観的なアドバイスをくれますし、新しい職場が決まってからも定着支援を受けることができます。
就職・転職活動をするのは何かと不安なもの。支援機関は様々ありますから、上手く利用して社会に戻る自信につなげてくださいね。
■まとめ
ひきこもりとは【就学、就労、交遊などの社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態】で、現在、ひきこもりの状態にある人は全国でおよそ115万人いるとされています。
ひきこもり問題が注目され始めた2000年頃は 若者世代が中心だったひきこもりですが、現在は中高年が中心になり、ひきこもり期間も長期化し 社会問題になっています。
適応障害・うつ病などのメンタルヘルス不調から、休職をくりかえし、だんだんと社会復帰が難しくなるといったケースが多くみられます。ですから、メンタルヘルス不調から休職・退職に至った場合、リワークなどの福祉サービスや支援機関を早めに訪ね、できるだけ状態が悪くならないうちに対策をするとよいでしょう。