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ストレスチェック制度とは?メンタルヘルス対策で知っておくべきことを解説

ストレスチェック制度を耳にしたことのある、人事・労務担当者の方は多いでしょう。現在、50人以上の従業員を抱える企業では年に1度以上のストレスチェックが義務化されています。

50人以下の事業所の場合はどうか?検査を怠ることで処罰などはあるのか?今回はよく分からないという声の多い、ストレスチェック制度について解説していきます。

 

 

[目次]

■ストレスチェックとは?

■ストレスチェック制度が制定された背景

■ストレスチェックのポイント

■ストレスチェックによって得られるメリットとは?

■メンタルヘルス不調者を出さないために

 

 

 

 

■ストレスチェック制度とは?

ストレスチェックとは、50人以上の従業員がいる事業所で義務付けられている検査です。

労働者のストレスを定期的にチェックすることで、労働者が安心して働ける職場環境づくりを図るものです。

ストレスチェック制度は、2015年6月25日に公布の「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において新設されたものです。

この制度により、従業員のストレスチェック(心理的な負担を把握するための簡単な検査)及び、ストレスチェックの結果に基づいた医師による面接指導等が事業者に対して義務づけられました。

 

 

■ストレスチェック制度が制定された背景

ストレスチェック制度が制定された社会的な背景として、精神疾患を原因とする労災認定件数が3年連続で過去最多を更新するなど、働くことに強いストレスを感じている従業員の割合が高い状況で推移している、という近年の状況があります。労働者の安全と、健康の確保対策を充実するために、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)が平成26年6月25日に公布され、平成27年12月より一定規模以上の事業場で ストレスチェックの実施が義務づけられました。

 

 

■ストレスチェック制度の概要は?

以下はストレスチェック制度が定める主な内容となります。

  • 労働者の心理的負担の程度を把握するために、医師・保健師等による検査(ストレスチェック)の1年に1回以上の実施を事業者に義務づける。
  • ストレスチェックを実施した後、検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、医師の意見を聴いた上で必要があれば、適切な就業上の措置を講じなければならない。
  • 国はストレスチェックを行う医師・保健師等に対する研修の充実・強化、労働者に対する相談・情報提供体制の整備に努める。

 

 

■ストレスチェックのポイント

ここではストレスチェックのポイントを解説していきます。

 

  • ストレスチェックの目的

そもそも、職場のメンタルヘルス対策には 一次予防<未然防止および健康増進>・二次予防<早期発見と対処>・三次予防<治療と職場復帰・再発予防> の「3つの段階」があります。 

ストレスチェックの目的は、「メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防と職場の改善」ということになります。

ストレスチェックを行うことによって高ストレス者を見つけ出し、対策を講じることでメンタル不調者の発生を防ぎます。そしてより働きやすい、健康的な職場へと改善することを目的としています。

 

  • 実施義務について

ストレスチェックは、従業員が常時50名以上のすべての事業者(法人・個人)に実施義務が生じます。常時50名以上にあたる従業員とは、勤務時間や日数に関わらず継続して雇用している従業員で、週1回のアルバイトやパート社員も含みます。

労働者が50名未満の事業場については、努力義務となっています。

派遣社員の場合、原則として派遣元が実施義務を負いますが、派遣先で集団分析を行う必要性から、派遣元と派遣先 両方での実施が望ましいとされています。

 

  • 頻度

毎年1回以上の実施と、労基署への報告が義務付けられています。実施時期を毎年同じ月にすることで、経年変化をチェックすることができます。

 

  • ストレスチェックの対象者

常時使用する従業員が対象です。ただし、社内の一般定期健康診断と同様に、就労時間が正社員の3/4時間以下のパート社員、休職中の社員は実施しなくてもかまいません。

 

  • ストレスチェックの実施者

医師または保健師や精神保健福祉士などが実施者になります。社内の人事部などで実施することはできませんから注意が必要です。

また、従業員の機密な個人情報を取り扱うため、法令で定められた医師(産業医)、保健師、精神保健福祉士等の資格者のみが実施者になれます。

 

  • 面接・指導・措置

高ストレス者として「面接指導が必要」と評価された従業員は希望すれば、医師による面接指導を受けることができます。

そして事業者は、医師の意見を聴いた上で必要な場合には、休職、残業禁止、労働時間の短縮、業務内容の転換など、適切とされる対処を講じなければいけません。

 

注意してほしいことは、ストレスチェックの結果から従業員に不利益な取扱いをすることが禁止されているという点です。

たとえば、

 

〇医師面接指導の申出を理由に、従業員に対して不利益な扱いをする事は法律上禁止されています。

〇ストレスチェックを受けない事や、事業者にストレスチェックの結果を提供しない事などを理由とした不利益な取り扱いは禁止されています。

〇面接指導の結果を理由とした、解雇、退職勧奨、不当な配置変更等も行ってはいけません。

 

  • 労働基準監督署への報告義務

ストレスチェックの結果について、事業者は労働基準監督署に報告を行う義務があります。

報告義務を怠った場合は、労働安全衛生法100条の違反で50万円以下の罰金に処せられます。

 

 

 

■ストレスチェックによって得られるメリットとは?

  • 労働者にとってのメリット

①ストレスチェックを受けることで自分の状態を知ることができる

自分にかかっているストレスの程度や、仕事上の何がストレスの原因なのかが分かります。

②ストレスへの対処のきっかけになる

セルフケアについて必要なアドバイスを得ることができます。

③労働環境の改善につながる

ストレスチェックを多くの方が受けることで職場ごとの分析ができます。また、医師に面接指導を受けて、医師が会社に意見をすることで、労働環境の改善に繋がります。


 

  • 事業者にとってのメリット

①労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止できる

メンタルヘルス不調から休職になると、休職者一人当たり年間で422万円の追加コストがかかると言われます。メンタルヘルスを未然に防ぐことで人材コストの流出が防止できます。

 

②生産性の向上が見込める

労働者のストレスの原因が分かり職場改善を行うことで、労働生産性アップというプラスの効果が期待できる

 

 

■メンタルヘルス不調者を出さないために

 

先ほども述べたように、職場のメンタルヘルス対策には 一次予防<未然防止および健康増進>・二次予防<早期発見と対処>・三次予防<治療と職場復帰・再発予防> の「3つの段階」があります。 

ストレスチェックの目的は、「メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防と職場の改善」です。

 

ストレス要因となる職場環境の問題点を把握し、できるものから職場改善していきます。

具体的な改善点は以下のようなものになります。

 

・仕事量(仕事量、心理的負担)

・組織形態(命令系統、人材配置、上司の公平な態度)

・仕事環境(気温、照明、騒音、休憩室設置)

・安心できる職場づくり(メンタルヘルス教育、相談窓口の設置、キャリア形成、ハラスメント対応、公正な人事評価)

 

 

“二次予防・三次予防はあくまで対処療法”で、一次予防で職場のストレス要因を根本改善することが重要と言われています。

 

また、従業員のメンタルヘルス不調に同僚や上司が気づくこともあります。

周りの人が気づくメンタルヘルス不調のサインは次のようなものです。

 

・遅刻・早退・有給休暇の増加

・無断欠勤、離席、休憩時間が増える

・業務量が変わっていないのに残業が増えている

・報告・連絡・相談がなくなる

・業務上のミスや事故

・メールの返信や書類提出が遅くなる、仕事の進捗が滞りがち

・会議や打ち合わせでの発言が減る、会議を欠席する

・挨拶をしない

・服装や髪型の清潔感が失われている

・突然泣き出す、独り言が増える 等

 

どれも「以前と比べてどうか」という目安ですから、日ごろから同僚や部下とコミュニケーションを取っておく、よく見ておく必要があります。

 

これらの症状がみられるようなら、メンタルヘルス不調の可能性がありますから、専門医の受診を勧めてください。メンタルヘルス不調の主な原因はストレスです。

ストレスの原因は職場以外の可能性ももちろんあるものの、同じストレス過多の状態が続くことで病気が悪化するリスクは高まりますから、早めの医療機関の受診をお勧めします。

 

■休職希望者への対応

従業員から休職希望があったなら、管理監督者と話し合い、医師による診断書をもとに休職期間を決めるなど、必要な手続きをすすめます。

復職に関してはこちらの記事も参考にしてください。

人事担当者によるメンタルヘルス不調者の復職対応のポイントとは?

 

 

企業側としても、「復職判断を見誤り同じ社員が再休職になった」という状況は防ぎたいものです。休職した従業員には、「リワーク」を勧めてみてください。

 

リワークとは、return to workの略語で、精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。

復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。(引用:一般社団法人日本うつ病リワーク協会)

 

生活リズムを整えながら復職に向けての心理面・スキル面のリハビリをすると同時に、休職になった時の振り返りをし、再休職防止への取り組みができます。

トレーニングを積んでから職場に戻れるため、リワークを利用して復職すると定着率があがるというデータが出ています。

 

また、リワーク支援でのトレーニングの状況や面談の内容を、企業側に情報提供することができるので、回復状況や、復職が可能か否かの判断の材料にできるなど企業側にも大きなメリットがあります。

 

リワークについてはこちらの記事を参考にしてください。

休職中にリワークを利用するメリットとは

■まとめ

ストレスチェックの目的は、「メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防と職場の改善」です。

労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止でき、労働者も自分自身の状態を知ることができるので、企業・労働者双方にとってメリットがあります。

ストレスチェックの機会を最大限に活用して、働きやすい環境整備に努め、生産性の向上に役立てていってください。

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