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「うつ病と思ったら大人の発達障害だった」働きづらさの原因と仕事選びのポイント

不注意でミスや忘れ物が多い。人の気持ちを察するのがどうも難しい…「大人の発達障害」という言葉が近年注目を集めています。

実は発達障害の症状が軽度であったため本人も周囲も気づかず、会社に入ってから就労や対人関係で悩み続け、うつ症状が発症してから発達障害があることを知った…というケースが増えています。

今回はうつ病の陰にある大人の発達障害と仕事選びについて解説していきます。

 

 

[目次]

■「大人の発達障害」は気づきにくい

■自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥障害(ADHD)どちらか割り切れないことも

■発達障害の二次障害でうつ病になることも

■発達障害からうつ病になった人の治療法は?

■発達障害の人が長く働くコツ

■大人の発達障害がある人の仕事選びのコツ

 

 

 

 

■「大人の発達障害」は気づきにくい

テレビなどでも「大人の発達障害」という言葉を耳にすることが増えました。

発達障害とは、幼少期から脳の発達がアンバランスで、脳内の情報処理に偏りが生じている状態のことです。ある特定のことには非常に優れた能力を発揮する一方、ある分野は苦手といった偏りがみられます。

 

誰にでも得意なことと苦手なことがあるものです。ただ、発達障害がある人はその差が非常に大きいため、生活や仕事に支障が出やすいのです。

 

「大人の発達障害」は、大人になるまで周囲に気づかれなかったほどなので、障害の程度は軽く、傾向も低いのが特徴です。

自分の気が合う友人と関わり、好きな分野を学び、好きな趣味をのびのびと謳歌している学生時代においては、障害の程度が低いこともあってそれほど気になりません。多少空気が読めない発言をしても「そういう性格だから」と、周囲も多めに見てくれる環境だったでしょう。

 

しかし仕事においては負う責任も大きくなります。就職をきっかけに、これまで隠れていた発達障害の特性が表面化してくるのです。

 

 

 

■自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥障害(ADHD)どちらか割り切れないことも

現在、発達障害は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」の3つに分類されています。

このうち学習障害は、文字の読み書きや数字の認識に困難が生じるため、仕事の資料作成などがとても時間がかかるなどして職場で比較的目立ちやすい障害です。

 

いわゆる、「大人の発達障害」と診断された人たちは、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の特性が比較的軽く、どちらも少しずつみられるようです。

それぞれの特徴は以下のようなものがあります。

 

〇自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴と、職場での困りごと

相手の状態や気持ちをおもんばかるのが難しい。悪気はないが、場の空気が読めない。上司に報告や相談をするのが苦手。

冗談や比喩が理解できず真に受けてしまったり、表情・目配せなどの非言語コミュニケーションが取れなかったりするので、「自分は嫌われているんじゃないか」という思い込みに囚われてしまうこともある。チームプレーが苦手。

仕事内容に興味があればとことん集中できる。集中力は高いが、他に注意がいかない。

 

〇注意欠陥・多動性障害(ADHD)の主な特徴と、職場での困りごと

不注意によるケアレスミスや忘れ物が多い。2つのことを同時に行うのが苦手。デスクが片づけられない、会社の備品を無くす。

時間管理が苦手で締め切りに間に合わないことも多く、残業でカバーしようとして疲れを貯めやすい。飽きっぽく、転職を繰り返す傾向もみられる。

 

大人になるまで本人も周囲も気づかないほど軽度の人たちは、この両方の傾向を持っていることが多いとされます。どちらかに当てはめようとせず、「どちらの傾向が目立つだろうか?」と考えてみてください。

 

特に仕事場で問題になりやすいのは、〈不注意〉による仕事のミスです。ミスをしてはいけないと分かっているのに、なかなか治すことができません。

また、自閉スペクトラム症の傾向があると、職場でのコミュニケーションに困難さを感じます。いわゆる「報・連・相」が苦手なため部下や上司、後輩との関係で悩むことが多くなります。

 

これらは性格のせいではなく、障害のもつ特性なのです。

しかし、上手くいかないことが繰り返されると「私は普通の人ができることができないんだ」「社会不適合者だ」と自信を失ってきます。苦手な場面が増えて、強いストレスを感じ、うつ病の症状が出るようになります。

 

 

 

■発達障害の二次障害でうつ病になることも

発達障害の特性により仕事が思うようにいかず、悩みやストレスが続いたため他の精神疾患を発症する場合、それらの精神疾患を「二次障害」と言います。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人の20~40%、注意欠如・多動性障害(ADHD)の人の20~50%がうつ病を併発するという研究もあります。発達障害の二次障害でうつ病を発症することは決して珍しくありません。

 

上司との人間関係に強いストレスを抱え、新入社員として入社して半年で「適応障害」として休職する方もいます。

経験を積みチームリーダーになったとたん、チームメンバーの気持ちに配慮することができず、悩んで「うつ病」の症状が出て休職する方もいます。

 

 

■発達障害からうつ病になった人の治療法は?

発達障害の方のうつ病の治療と、一般的なうつ病の治療は、基本的に同じです。

うつ病の治療は、主に休養・薬物療法・精神療法の3つです。医師から休職するようにとの診断があった場合、会社に申し出て手続きをすすめます。

 

しかし、休職してうつ病から回復したとしても、その背景にある発達障害の特性を認識し、具体的な対策をしなければ、復職後にまた同じような場面でストレスを感じうつ病を再発することになります。

ですからしっかりと休養し、復職を考えられるようになったら休職に至った原因を振り返るようにすることが肝心です。

 

もちろん、それは体力と気力が回復してきたらで構いません。

仕事から離れ時間が経つと、休職前の状態が客観的にみられるようになってきます。自分にとって何が一番ストレスだったのか?どうしたらその状況を改善できるか?業務内容が原因なのか?人間関係が上手くいかなかったのか?これらをゆっくりで構いません。

 

紙に書き出し、少しずつ整理してみてください。自分の考え方の癖、行動の癖などが見つかり、復職後の再発防止にもつながります。

 

 

■発達障害の人が長く働くコツ

大人の発達障害がある人が長く働くためにどのような工夫ができるでしょうか。いくつかご紹介します。

 

  • とにかくメモを取る、チェックリスト化する

ケアレスミスや見落としが多いというADHD傾向の強い方にオススメの対策です。

リスト化のコツは、できるだけ一つのノートや紙などにまとめることです。完了するたびに線を引いて消す習慣をつけましょう。

 

  • 休養が必要な時は休職を考える

責任感の強い方の場合、「自分は欠陥人間だ」「普通の人と同じように仕事をこなす自信がない」と自己否定的な気持ちを抱え、気づかないうちに自分を追い詰めてしまいます。

職場に行くのが苦痛で体に異変を感じたり、重苦しい気持ちが続いたりしているようなら、一度病院にかかってみてください。

「そうは言っても、会社の人に迷惑をかけられない」と思うかもしれませんが、二次障害が悪化するとさらに仕事に支障をきたすようになるので、早めの治療は周りの人のためであるのです。

 

  • ジョブコーチの支援を活用する

ジョブコーチとは、職場適応援助者のことです。障害者の就労支援を行う公的な専門家であり、障害を持つ人がいる企業に一定期間入って支援を行います。ジョブコーチの役割は「環境調整」で、障害者の障害特性と職場環境の調整を図ることです。

例えば、ジョブコーチが発達障害を持つ社員の上司に

「複数課題を同時に処理するのは不得意なので、仕事は一つずつ伝えてください」

「『多めに出しておいて』の『多めに』のような曖昧な指示の理解が苦手なので、『30個』など具体的な指示を行ってください」

などとアドバイスすることもあります。

 

費用は無料です。利用を希望する場合は障害者職業センターに問い合わせてください。障害者手帳の有無にかかわらず利用できますが、利用の際は事業主と本人の両者の承諾が必要です。

 

  • 報連相を工夫する

発達障害の人によくある悩みとして、仕事で適切な報告や相談をすることができないということがあります。工夫のポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。

 

〇報告・連絡・相談のタイミングが分からない

・メモを相手の机に置いておく

・今よろしいでしょうか、と尋ねる

・上司と相談し、定期的に報告するタイミングを決めておく

・上司と相談し、業務のどの時点で報告すればいいのかルールを決めておく

 

〇「何を報告すべきか」が分からない

・報告する前に伝える内容を整理して紙に書いて報告

 

〇誰に相談するのか分からない

・業務ごとに相談する相手を決めておく(総務には、同僚には、先輩には、直属の上司にはこれ、など)

 

■大人の発達障害がある人の仕事選びのコツ

大人の発達障害は特性の幅が広く、程度も人により様々です。ですから、発達障害はこれが向いています、というような仕事はありません。それを踏まえた上で、発達障害の方の特性を活かしやすい仕事を挙げると、

プログラマー、webデザイナー、ライター、校正、事務職などの、一人でコツコツ集中してできる仕事が向いていると言われます。

 

また、どんな職場でも、働きやすい労働環境を作るために、自分の特性を認識し、上手くいっていない箇所には工夫をする必要があります。

 

発達障害の特質を活かした仕事についてはこちらの記事もご参考にしてください。

【ASD】自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群・広汎性発達障害 等)のあなたが自分らしく仕事をするために

仕事のミスが多いのはADHD?大人の発達障害・注意欠陥障害について解説

 

 

 

 

■まとめ

「大人の発達障害」は、大人になるまで周囲に気づかれなかったほどなので、障害の程度は軽く、傾向も低いのが特徴です。就職をきっかけに、これまで隠れていた発達障害の特性が表面化してくるのです。あなたの働きづらさは発達障害から来ているものかもしれません。

 

うつ病の陰に発達障害があるのなら、その背景にある発達障害の特性を認識し、具体的な対策をしなければ、復職後にまた同じような場面でストレスを感じうつ病を再発することになります。

復職を考えられるようになったら休職に至った原因を振り返るようにすることが再発防止に繋がります。

 

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