メンタルヘルスとは「心の健康状態」を表す言葉です。
職場におけるメンタルヘルス不調とは、うつ病や統合失調症などの精神障害に加え、ストレス・強い悩み・不安など、心身の健康に影響を与えるものを言います。仕事が続かないと悩むメンタルヘルス不調の人には、共通点があると言われています。
今回は仕事が続かないと悩むメンタルヘルス不調の方の共通点と、自分でできる対策を解説します。
[目次]
■“仕事が続かない”とは?
■メンタルヘルス不調がある人が1年目で退職する確率は50%
■ストレスを抱えメンタルヘルス不調になりやすい人の5つの共通点
■仕事を長く続けるために自分でできる対策
■“仕事が続かない”とは?
一般的に、仕事が長続きしない人とは「仕事が1年以上続かない人」のことを指します。
厚生労働省が平成31年に報告したデータによると、新卒者の1年以内の離職率は11.6%。1割強の人が1年目で入社した会社を退職しています。
会社を辞める理由は様々ですが、最も多いのは「やりがいのある仕事がしたい」「給料面の不満」「人間関係がよくない」の3つと言われています。
■メンタルヘルス不調がある人が1年目で退職する確率は50%
一方、メンタルヘルス不調のある方が退職する理由で最も多いのは、「体調の悪化」「障害の発生や再発」「職場環境に適応できなかった」の3つです。
メンタルヘルス不調のある方を対象にしたアンケート(「転職・退職理由に関するアンケート調査」障がい者総合研究所、2015年752人を対象に調査)によると、
メンタルヘルス不調を抱える人が「転職や退職を考え始める時期」として最も多い回答は入社後3ヶ月未満です。つまり、入社して間もなく何らかの悩みや不安を抱えていると考えられます。
そして、メンタルヘルス不調のある方が入社してから退職するまでの期間を見ると、1年以内の離職率は46%であり、約半数が1年以内に退職している事が分かります。
■ストレスを抱えメンタルヘルス不調になりやすい人の共通点5つ
同じ職場で働いていたとしても、全員がメンタルヘルス不調になるわけではありません。メンタルヘルス不調になる主な原因はストレス過多と言われます。
強いストレスにさらされ続け、メンタルヘルス不調になってしまう人もいれば、同じ環境でもストレスを感じずあっけらかんと長く働いている方もいます。
ストレスを抱えやすく、メンタルヘルス不調になりやすい人にはいくつかの共通点があるようです。
共通点1:コミュニケーションが苦手
会社で働くと、上司や同僚とのコミュニケーションを避けて仕事をすることはできません。
ですから、例えば
・言いたいことが言えず、本当は嫌なのに残業を引き受けてしまう
・相手がどう感じるかを考えず自分が思ったまま発言をすることで周囲の人を傷つけたり怒らせたりしてしまう
・挨拶が気持ちよくできない
・雑談が苦手なので会話をしない
などが続くと、次第に仕事がうまく回らなくなったり、職場の人間関係が苦痛になったりします。
特にメンタルヘルス不調がある人は、「病気のことはきっと理解してもらいない」と内にこもってしまう傾向があります。長く働くためには、コミュニケーションを学び、苦手意識を減らしていく努力も必要です。
共通点2:自分を追い詰めやすい思考
ものの捉え方や考え方の癖を認知と言います。同じ職場でもストレスを感じず、楽観的に物事を捉える人がいる一方、悲観的に捉え自分を追い詰めてしまう人もいます。
例えば、仕事でミスをして上司から注意されたとします。
楽観的な人は、「失敗してしまった、でも次同じ失敗をしないようにしよう」「失敗は成功の元。成功している人ほどたくさん失敗している」などと考えるでしょう。
しかし、悲観的な人は、「自分は会社のお荷物だ、辞めた方がいいんじゃないか」「上司から見損なったと思われたに違いない」「入社時から自分はちっとも進歩していない」とネガティブに捉え、強いストレスを感じるようになります。
共通点3:楽しめる趣味がない
仕事と家の往復の繰り返しでは毎日が単調になり、次第に通勤が苦痛になってきます。そんな中、楽しい趣味や息抜きがあるとストレス発散になります。
「休みの日は何をしていますか?」と聞かれて「テレビを見てるくらいです」「家でyoutubeを見ながらお酒を飲んでいます」と言う人は、身体は休めているものの、心がスカッと晴れるようなストレス発散になっているとは言い難いです。
共通点4:つい体の無理をしてしまう
長時間労働からくる過労など身体的ストレスも、メンタル不調を引き起こす大きな要因です。
他の社員も無理を押して頑張っているのだからと無理をするのが当たり前だという考え方であると、有給や午前休を申請するのもはばかられますよね。しかし、体調がすぐれない時は仕事を休んだり、病院に行く勇気も必要です。
せっかく入社した会社なのに、無理をしたせいで休職、ということになっては会社にも迷惑がかかります。自分の体調管理も仕事のうちと思って、いつもと体調が違うと思ったら早めに病院を受診しましょう。
■仕事を長く続けるために自分でできる対策
ここでは仕事を長く続けるための対策をご紹介します。
対処法1:コミュニケーション方法について学ぶ
コミュニケーション能力を向上することは簡単ではありませんが、簡単なことから始めてみるとよいでしょう。例えば、“笑顔で挨拶をする。” “なにかをしてもらったら、笑顔でお礼を言う。”
気が滅入ってくると笑顔が自然となくなるものです。口角を上げるだけでも前向きな気持ちになる効果がありますよ。
コミュニケーションが苦手だと、どうしても人との関わりを避けがちになります。始めは、苦手意識を減らす、くらいの気軽な気持ちで始めてみてはいかがでしょう。
【言いたいことが言えない】自己主張が苦手なあなたが学ぶべき“アサーション”がもたらす効果
対策2:自分なりのメンタルコントロール術を身に着ける
ストレスを抱えてメンタルヘルス不調になる方は、自分を追い詰めるようなものの捉え方、考え方をする癖があります。
ものの捉え方の癖や考え方は一生変わらないわけではなく、前向きで自分を楽にする考え方を習慣づけることができます。
自分のメンタルコントロールのスキルを向上するには、自分の心と向き合うワーク本のようなものがおすすめです。
自分の心の中のモヤモヤをノートに書き出す、嫌なことが起きたらそのできごとの良い面を見つけて書き出す、といった自分の心を整理して上手に付き合う「ツール」を見つけておくと心の安定に役立ちます。
精神疾患になっても安心して働くために役立つツール【認知行動療法】を知ろう
対処法3:楽しめる趣味を見つける
夢中になれる趣味をもちましょう。絵を習う、書道やペン字を学ぶ、楽器を買って練習する、カメラを買って写真を取るなど、上達が自分で分かるものや、ボルダリングやフットサル、ハイキングや登山など、体を動かし自然と触れ合えるものは気分転換になるのでおすすめです。
変化に富んだ仕事(例えば営業や接客、クリエイティブ系)をしている人は、仕事が活力になっているかもしれません。
しかし、他に打ち込める趣味もあると、仕事が上手くいかないとき心が楽になります。仕事で落ち込んでいるときも、自分が得意なことをすると自信が取り戻せ前向きな気持ちになれますよ。
対処法4:相談できる人脈を作る
家族や友人など困ったときに相談できる人を増やしておくようにしてください。
生真面目な人ほど悩みを抱え込んでしまいますが、小さな悩みでも誰かに相談する癖をつけておくと、仕事で悩んだ際にも解消しやすくなります。誰かに悩み事を話すことだけでもスッキリし、心が軽くなることもあるのです。
また、メタルヘルス不調を抱えながら働くことに関して相談できる、公的な窓口もあります。
障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターはメンタルヘルス不調者の就労・自立に関して親身になって聞き、支援してくれるので覚えておいて損はありません。
対策5:自分にあった仕事を見つける
自分のスキルや体力にあった職場を選べていないと、働き始めてから無理をすることになりかねません。メンタルヘルス不調が原因で休職したのであれば、再発しないような労働環境を選ばないといけません。
せっかく転職できたのに、症状が再発し退職…という結果になると、再就職先にも迷惑がかかる上、「やっぱり自分はダメだ…」と自信を失ってしまいます。
始めは正社員にこだわらず、アルバイトや短時間労働の仕事で様子を見ることもよいでしょう。
自分に適した仕事探しに困っている時はハローワークの障害者専門支援窓口を訪ねてみてください。精神障害者の積極的な採用を行っている会社の求人を無料で紹介してもらえますよ。
■職場に定借する力をつけるために、リワーク機関を利用することもおすすめです
リワークとは、メンタルヘルス不調の人が職場に復帰するためのリハビリやスキルアップができる 支援プログラムです。
主に 医療機関、地域障害者職業センター、障害福祉サービス事業所(自立訓練など)で受けることができ、仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、認知行動療法、SST、アサーションなどさまざまなプログラムを行い、職場に定借できる力を身に着けていけるので、ぜひ検討してみてください。
休職中にリワークを利用することで得られる多くのメリット。具体的なプログラムや内容を解説
■まとめ
メンタルヘルス不調により仕事が続かない人に共通する点と、その改善点を解説しました。メンタルヘルスの不調は再発しやすいので、体力や集中力の回復、不調に陥った状況の振り返りなどをしっかり行い対策することが必要です。
転職を繰り返している人は、「メンタル不調に陥った原因は何だったのか?」「自分にはどんな仕事が向いていなくて、どんな仕事が向いているのか?」と、自分の病気と仕事について振り返り、同じような状況にならないような仕事を選ぶことが大切です。
一人での転職活動に難しさを感じている人のために、ハローワークの専門窓口や就労移行支援事業所、自立支援事業所など様々な機関がありますから、積極的に使ってみるようにしてください。